Mar 02, 2021
再会
ストーブのある部屋には、
暖をとりにいろんな人がやってくる。
そういえば、覚えているかい。
あれもこんなに雪の積もった日のことだったな。
みんなで雪だるまを作ったっけ。
そのあと、雪合戦をして。。
文学青年はその男の顔を見ていて、
ぼんやりと思い出した。
なんと、はるか13年前。
この町に来て間もない頃、
雪合戦をしていて、
顔に雪玉をぶつけてしまった相手は、
この人だったのだ(^^;)。
あれにはまいった。
といって、男は笑った。
このシーンにも既視感が。。
文学青年は、よく覚えてるなあと、
感心したのだった。
そういえば、
この女性も、
どこかで見覚えがあるような。。
私の顔に、
なにかついてる?
女性はさっと身構えるような動きをして、
文学青年のほうに振り向いた。
女性の顔を正面から直視したとき、
文学青年はすべてを思い出した。
なんと、はるか12年前の1月の末。
その日、白日夢に現れた花魁姿の女性と、
そっくりな顔立ちの女性を、
ペンギンでみかけて驚いたことがあり、
そのときの不思議な体験の記憶が、
目の前の女性の顔にぴったり重なって
鮮明に蘇ったのだった。
文学青年が非礼をわびて、
率直にことのいきさつを話すと、
聞いていた女性は納得したようだった。
ちょうどその頃は、任務もかねて、
毎日ペンギンに通っていたから、
あながち作り話じゃないみたいね。
任務、と聞いて、
文学青年ははっとした。
さきほど身構えた彼女がとっさに、
手をのばしかけていた机のうえには、
ホルスターに収まった拳銃が、
無造作に置かれていたのだった。
それから2人はしだいにうちとけ、
隣で聞いていた雪合戦の人も加わって、
当時のペンギンのことなど、
あれこれの話題に花をさかせて、
夕暮れから夜になるまで話し込んだ。
私はある組織に所属しているの。
もしあなたみたいに自分史を書いたら、
たぶんすごく長いものになると思うわ。
そういうと、その女性は一瞬遠い目をしたように見えた。
仕事柄、忍び込むのが得意だから、
夢でまた会えるかもしれないわね。
と言って、別れ際に悪戯っぽく笑ったのだった。
解説)
2008年2月4日「雪の公園で」
2009年1月30日「はるまつゆめ」
のエピソードが盛り込まれています。
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