Jul 18, 2024
フミコの帰郷 そのよん
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二人が月の扉のある部屋に戻ると、
リザードがまっていた。
おお、フミコ、蘇ったのだな。
ここの月の扉が使われたので、
もしやと思ってきてみたら、
やはりお前だったか。
リザード、本当に久しぶりね。
あなたが魔族の蘇生の呪文を
アイスに教えてくれたおかげで、
蘇ることができたの。
感謝してるわ。
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大昔の仲間内の戦争の結果、
というか、正確にはお前が死んでからのことだが、
我々レプテュリアンはむやみに人間と
接触してはならないという決まりになったんだ。
戦争が起きたのも、我々だけが
魔族と接触して文化を分かち合い、
仲間の嫉妬を買ったしまったのが原因だったからな。
ここの再興計画が中断したのもそのせいで、
魔族の協力が得られなくなったのでね。
だから人間に我々が記録した魔族の
呪文を教えるのは協定違反だったんだが、
あのグリーンマンの身の上が哀れでね。
再会を果たして自由にしてやったかい。
フミコはアイスにも話した
グリーンマンや動物たちとのやりとりを、
リザードにも伝えた。
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なんとそんなことを言ったか。
お前のかけた魔法が強力すぎたのかもしれないな。
はは冗談だよ。
彼らが遺跡とその周辺を
これからも守ってくれるのは
我々にとっても好都合だ。
私が蘇ったことをお仲間に知らせたの?
いや知らせるつもりもないよ。
知らせても、再生を繰り返して
生き継いでいる仲間も少なくなり、
お前の強大な呪力のことを覚えているものは、
もうほとんどいないだろう。
私はたまたまジャングルにリクガメ探しにきて、
知り合ったチンパンジーのリンリンに
何度かここの遺跡にまつわる昔語りをしていて、
お前のことをよく覚えていただけだ。
そうしたらグリーンマンの、お前を慕う、
哀れな話を聞いたのだよ。
あなたたちのリクガメ収集の趣味は変わってないのね。
とフミコが言った。
そうなんだ。
あ、そろそろおやつの時間なので
失礼するよ。
とリザードは言った。
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あっという間に行っちゃったわね。
レプティリアンって、
1日に何回おやつを食べるのかな。
ねえフミコ、もしできたら、
私、あなたの蘇生が成功したことを、
一緒にいった人たちにも教えてあげたいんだけど。
みんなどうなったか気にしていると思うの。
アイスはフミコより先に蘇ったハンスが、
特に気にかけていたことをかいつまんで話した。
鏡の扉を使ったらマークの集落にも行けるの?
とアイスが言った。
場所が特定できれば、どこにでも行けるわよ。
それはどのあたりにあるの?
この上にある集落の遺跡から
谷の渓流を越えてジャングルの斜面を登って
半日くらいの距離にある。
私が生きていた頃には、
都の近くにそんな集落なんてなかったわ。
マークっていう人が開拓したんだって。
それでマークの集落ってみんな呼んでる。
そこにはフラハっていう魔族の魔術師も住んでるの。
フラハは、あなたを甦らそうとしてくれた人よ。
呪力不足で頭蓋骨が震えただけで、
うまくいかなかったけれど。
ああ、なんとなく思い出した。
魔族の人だったら、
鏡の扉のことも知っているから
驚くこともないでしょう。
その人の家に行きましょう。
その前に、色々お世話になった
あなたに呪力を授けるから。
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そういうと、
フミコは持っていた肩飾りを手に取って、
肩飾りに嵌め込まれていた一粒の宝石を外し、
呪文を唱えた。
するとその宝石の嵌め込まれた
金の指輪が出現した。
これは私とグリーンマンからの
感謝の気持ちとして受け取って。
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フミコはアイスに向かって
呪文を唱えてから言った。
私は今、あなたに呪力を授けたの。
この指輪はあなたの呪力を昂めてくれる。
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どの指にはめればいいの?
右手の中指がいいのよ。
指輪には他にも効力があるけど、
それははめているとわかるわ。
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じゃあ、出発しましょう。
そのフラハの家の様子を思い浮かべて。
そして浮かんできた言葉を唱えるのよ。
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アイスが言われた通り、
フラハの家を思い浮かべて
脳裏に浮かんできた言葉を唱えると、
部屋の中に鏡の扉が出現した。
扉は中空に浮かんでいる。
こんなことが。
レプテュリアンの月の扉を使うと、
またリザードに迷惑かけるから。
彼らの月の扉や光の石は
たいてい固定された装置のようなもので、
マニュアルにある呪文で行き来するの。
魔族に伝わる鏡の扉は、
そういう使い方もできるし、
その都度出現させることもできる。
コツを覚えれば簡単で
ずっと便利よ。
解説)
続きます。
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