Sep 25, 2023

仮想世界で そのさん

d1

君たちは先住民のようだね。


d2

くんくん。
どうやら予想通りのようだ。
ミズハがお待ちかねだよ。


d3

周囲に薄い霧がかかると
草地の中にぼんやりと
一本の木立が現れた。
木立のうろから顔が覗いている。


d4

あなたはどなたです。
とツナが言った。

私の名はミズハ。
ここは戦火で瓦礫だらけになった
影のような、うつろな世界だと思っていたら、
どうやら勘違いだったようね。
というか、君たちは本当に
先住者なのかな。

もちろん。
私たちはずっとこの世界に住んでいました。
最近、急に森が増殖し始めたので、
その原因を探しに来たんです。

確かに増殖を始めたのは私よ。
私は荒廃した世界に恵をもたらす
緑化運動の推進者なの。
でもそのためには豊富な量の水が必要。
水脈を辿って南に動いていたっていうわけ。
ちょうど最適な地下水源を見つけて、
今は小休止しているところだけれど、
やがては東西にも緑地を拡張していく予定なの。


d5

でもここは奇妙な世界。
先住民がいたというのなら話は別ね。
影のような存在ではなく、
そこの黒い服を着たあなたは、
アンドロイドの体なのに、
生命存在特有のオーラがある。
私がこの世界に来た時には感じなかった。
あなたが先住民で、
侵入者ではないという証拠はあるの?


d6

私はこの世界に破滅をもたらしに来たわけではない。
滅びた世界を再生させるために旅するもの。
時空の歪みに導かれてここにやってきたのよ。
緑化計画を阻害する異世界からの侵入者は排除します。
あなたが先住民であるという証拠を見せて。

そういうと、周囲に薄い霧が立ち込めて、
次第にミズハという顔をもった木立も
ハリネと名乗ったトゲのある獣も消えていった。


d7

今のはなんだったの?
理屈っぽくて、わかりやすいと言えば
わかりやすい説明だったけど、
なにか、すごい誤解があるようね。

ここは一旦ハウスに戻って、
みんなで相談しようよ。


d8

やがてツナたちは、
バーボンハウスに帰り着いた。


d9

やあおかえり。
ナディアとドロレスなら
遅めのランチを済ませて
部屋でくつろいでいるよ。
とミトラが言った。



解説)
またややこしそうな展開に。
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