Apr 20, 2023
メルティの夢の部屋 そのに
後ろの人の気配に、メルティは驚いて飛び退いた。
みんなも一斉に身構えている。
あなたはどなた?
私はダリでしょう?
なんちゃって。
おや。百猫の王がいらっしゃいましたか。
君は夢魔サルバドールだろう。
好んで芸術家の夢に現れると言われる夢くい。
彼は夢の世界に住み着いて、
夢見るものにインスピレーションを
与えるとも言われているが、
強烈なイメージを見せて、
破滅させてしまうこともあるんだ。
とシュレディンガーが言った。
そんな恐ろしい夢食いがなぜここに?
それに私芸術家じゃないのよ。
とメルティは言った。
さすがに百猫の王。
一目で私のことを見抜かれたようですな。
それに、お嬢さんは芸術家ではないと。
そのお言葉にはちょっと同意致しかねますな。
その証拠に、こんな素晴らしいイメージが。
と言ってサルバドールは、
壁の絵画を見つめた。
なにか誤解があるようね。
とりあえずメルティはお茶を淹れて
もてなすことにした。
メルティは、この絵画は、
自分の心に浮かんだものでなく、
別の世界で描かれた絵画を
運んできたのだと説明した。
なるほど、そういう事情があったのですか。
私たちのような夢食いは、素晴らしい才能を求めて
夢の世界を探索しているのです。
その目印となるのが、その人の夢の世界で、
どのようなイメージが描かれているのかということで、
優れたイメージは私の目には光り輝いて見えるのです。
そんな光に導かれて、ここに来たのですが。
その特異な光の原因は、お嬢さんの才能ではなく、
異世界からもたらされたものだとわかりました。
しかしそれはは本来ルール違反でしょう。
そういうことが行われると、
夢に現れる個性の意味が損なわれてしまい、
ひいては芸術創作の根幹に関わることなのに、
管理局は何もしないんだから。
特にあの天使が局長になってからたるんでいる。
とサルバドールは、絵画に目をやりながら、
やや不服そうに言った。
自分も異世界から来たピノコは、
私もメルティの夢を変えている異物なのかと
思って、ちょっと戸惑っている。
しかし、この変な人も外からやってきて、
夢見る人にインスピレーションを与えるのなら、
同じことじゃないの?
とも思った。
サルバドールは立ち上がると、
ふんわりと浮遊しながら絵画の前に行って、
じっと眺めている。
この絵は複写でその上右側の部分が欠けている。
しかし、えも言われぬ超現実的な魅力がある。
お嬢さん。
私がここに住めば、この夢の世界を
こんな絵の世界に変えてしまうこともできますよ。
あなたの無意識もそれを望んでいるからこそ、
この絵に惹かれたのではないでしょうか。
これは聞き捨てならない。
それは守護の夢食いである私を差し置いて、
このメルティの夢を乗っ取りたいということかな。
とシュレディンガーは言った。
シュレディンガーは、身を翻し、
テーブルに飛び乗って、
サルバドールと睨み合っている。
これは一触即発。
ハリーやヴィヴィアンに伝えなくちゃ。
クロコに変身していたマリアは
急いで魔法の扉に向かった。
解説)
サルバドールは
随分昔に美術館の小物売り場で買い求めた
ダリの人形を使っています。
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