Mar 17, 2022
春めく日々 そのはち
![b1](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b1.jpg)
アンの頭は元の位置で静止した。
しばらくの沈黙ののち、
ゴ心配ナク。
濾過機能ガ作動シマシタノデ。
とアンはいった。
それはよかった。
一時はどうなることかと心配したよ。
変化といえば、
アンのセリフが漢字まじりになっていたが、
その変化には誰も気がつきようもなかった。
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ドロレスサン、
先ダッテハ失礼シマシタ。
認知レベルガ低下シテイタノデ、
アナタガロボットデアルコトガ
ワカラナクテ。
とアンはいった。
![b3](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b3.jpg)
わかってもらえたのね。
わたしたち、みかけは違うけど、
もともとは同じ研究所にいた
バトラー博士とシェリー博士によって
開発されたモデルを基礎につくられているの。
それから博士たちは別の道を歩んだんだけど、
水をエネルギー源とする仕組みは同じ。
![b4](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b4.jpg)
この世界で私たちだけが。
それはちがうよ。
とジェイソンがいった。
アンはもう分かっていると思うけど、
僕もふつうの人間じゃないんだ。
![b5](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b5.jpg)
そういって、ジェイソンは
去年の秋にルビーからもらった
手袋の片方をぬいでみせた。
僕はね。骸骨標本なんだ。
ドロレスは驚愕して、
あなたもロボットだったのね。
といった。
そうじゃなくて。
![b6](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b6.jpg)
そのとき、ルビーがやってきた。
ジェイソン。
駄目でしょ手袋脱いじゃ。
![b7](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b7.jpg)
ジェイソンはあわてて
手袋をもとにもどした。
みんなに怪しまれるから、
っていったでしょ。
ごめんなさい。
ルビーは、気をつけてね。
といいのこすと立ち去っていった。
![b8](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b8.jpg)
どうなってるの?
あのひと、あなたが人間じゃないって、
知ってて。
うん。全然気にしないひともいるんだよ。
それにさっき言いかけたんだけど、
他にも人間じゃないひとは、
この町には何人もいるんだ。
それもロボットってわけじゃなくて。
ドロレスの困惑は深まるばかりだった。
アンはジェイソンの思考が
ある程度読み取れるようで、
ずっと沈黙していた。
![b9](/~shimirin/blog/kirita/entries//20220317204758.files/b9.jpg)
ずっとひとりきりだって思ってたけど。。。
この世界って
全然論理的じゃない世界なのね。
日が暮れかかるなかで
二つのロボットはずっと
よりそって佇んでいた。
解説)
ルビーがジェイソンに手袋をくれたのは、
2021年11月29日の「ベーカリーの前で」
の最初の画像でした。
それがこんなエピソードにつながるとは、
ものごとの流れはわからないものです(^^;)
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