Jun 30, 2021
新しい出会い

マーウェンか。

たまきはスイッチをけして、
あー面白かったと言っている。
なにみてたの。
映画。ロバート・ゼメキス監督の「マーウェン」だよ。
ああ、興行成績ふるわなくて、
大コケしたっていわれてた2018年の映画ね。
でもフィギア好きなら絶対面白いよ。
自分の庭にフィギアたちの暮らす村を
つくった人の話なの。
最後に住人200人になったって、
テロップが流れるのがすごい。
と横で一緒に見ていたナオミも言った。

映画見たら、なんだかお腹空いちゃった。
ベーカリーにいってくる。

フレイムさん、おはよ。
おはよう。今日は新作のパンがあるよ。

テーブル席は混み合っていた。
ジルさんは、パイプ煙草がお好きね。
わたしはカメパンのほうが好き。
運命を感じるだけでいいわ。
朝酒ワインはおいしい。
などと話が弾んでいる。
さいわい一席だけ空いていて、
たまきは相席にしてもらうことができた。

ああ新しく命がよみがえり、
それとなく願い事のかないそうな予感。

たまきは相席になった男性が、
大事そうにフィギアを箱から取り出して、
嬉しそうにしているのをみて、
思わず声をかけたくなった。
すみません。
それって、GIジョーでしょう。
ええ。
今さっき「マーウェン」っていう映画を
みたばかりで、すごく気になっちゃって。
ああ、あの映画、僕もみましたよ。
ゼメキスはすばらしい監督ですね。
最後にちょっとほっこりさせてくれて
救いもある感動の人間ドラマでした。
そうそう。
それにフィギア好きの僕にとっては、
特別に興味深い作品でした。
といいますと?

実は僕もあの映画の主人公のマークみたいに、
家の庭で第二次世界大戦の
ヨーロッパ戦線のジオラマをつくっているんです。
おお。
このフィギアもその一員になります。
それってすごく楽しそう。
もし興味がおありなら、
今度遊びにいらっしゃい。
おお。ぜったい行きます。

たまきは
よくわからないが、なんとなく
願い事がふいにうまれて、
たちまち叶ったような気がした。

あ僕はジャンといいます。
家は郊外にあって、
今では数少ない建て売りの
バービーハウスに住んでいます。
アルのビストロのすぐ近く。
ジャンは大事そうにフィギアを箱にしまい、
サラサラっと家までの略図をかくと、
たまきに渡してくれたのだった。
たまきはお礼をいって、
言い忘れていたことに気づき、
あ、わたしはたまきといいます。
とつけくわえた。
解説)
今回は新しい思いつきエピソードのはじまりです。
そのきっかけは、先日の6月23日に
偶然ケーブルテレビの洋画専門チャンネルで、
映画「マーウェン」を観たことでした。
「『マーウェン(Welcome to Marwen)』は、
2018年のアメリカ合衆国のドラマ映画。
監督はロバート・ゼメキス、主演はスティーヴ・カレルと
レスリー・マンなど。
実在するイラストレーター・ミニチュア写真家
マーク・ホーガンキャンプの実話をもとに、
暴漢たちに襲われて重度の記憶障害を負った男性が、
独自の空想世界を作り上げることで社会復帰を
果たしていく姿を描いている。」(Wikより)
という作品です。
バービー人形や1/6のアクションフィギアが
モーションキャプチャの技術を使って
表情豊かに活躍するこの映画自体
面白く観たのですが、さらに面白かったのは、
この映画の主人公マークのモデルとなった、
実在するマーク・ホーガンキャンプ氏の、
架空の村マーウェンを舞台にした写真作品の数々を、
ネットでみたことでした。
たとえば「MEDIALIFECRISIS」というサイトの中の、
このページで、
ゼメキス氏の映画「マーウェン」の元になったという、
ジェフ・マルンバーグ氏によるドキュメンタリー「MARWENCOL(2010)」が
紹介されているのですが、
ページの下のほうまでスクロールすると
このドキュメンタリーのスチール写真を
見られるギャラリーがあります。
これを見ると、映画「マーウェン」に登場する、
フィギアたちの洗練された世界とは、
また別の、手作り感満載の世界があり、
そこでフィギアたちが息づいていることに、
感動させられるのでした。
さてこのさき、どうなるかわかりませんが、
とりあえずの前口上でした(^_^)。
WriteBacks
http://haizara.net/~shimirin/blog/kirita/blosxom.cgi/20210630214203.trackback
writeback message: Ready to post a comment.