May 19, 2005
平岡篤頼先生
が昨日虚血性心疾患で亡くなられたと今朝の新聞で知った。今年年初の年賀状の返信に、「今でも時々路易さんのことを考えています。」と書き添えてくださったのを、幾度となく思い出していたのだった。路易(ルイ)は私の長兄。平岡先生にまつわるエピソードはいくつかあるが、3年ほど前に先生のお若い頃出版された小説集を2冊ほど読んで、つくづくやさしい方だなーと思ったのだった。バルザックの『谷間の百合』の翻訳は名訳の誉れが高い。早稲田の仏文の先生方は青春時代に小説家志望だったひとが多くて、訳も、日本語の小説としてのレベルを優にクリヤしている。今はどうなのか知らないが。平岡先生は長いこと文芸誌「早稲田文学」の編集長でもあって、翻訳が創作に比肩し得るのはそういった事情にもよる。早稲田の仏文を私的に展望すれば、新庄嘉章(かしょう)、平岡篤頼(とくよし)の系譜が最も香り高く、私は好きだ。せせこましさがないのだ。お二人とも関西のご出身。86、96までお元気でいらして欲しかった。
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