Jun 07, 2013
OPIUM と ALCOOL
アポリネールの詩集『アルコール』のアルコールという言葉の含む意味がいまいちすっきり飲み込めていなかったのですが、コベールの小説『骨の列島』(背骨列島改め)をくりかえし読んでいて、ああ、そうなんだ、とすとんと胸に落ちたのは、ごく最近のことです。日本女性の恋人とのコミュニケーションの困難さを、氷はたくさん入っているがアルコールのほうはわずかしかもう残っていないウオッカのグラスに例えているくだりで、アポリネールの意図のほうにも思いが廻ったのでした。もちろん詩集の冒頭の詩「地帯」の最後には「君の命のように燃えるこのアルコールを」というフレーズがあって、詩集のタイトルのなぞを明かしているのでしたが。アポリネールもそうやって生き、コベールもそしてCDのタイトルを『OPIUM』(阿片)とした若いカウンターテナーも、揮発性の高いアルコールを飲みほすように現在を酔い、生きているのだと思うと、わたしたちの一瞬はいのちの水なのだともういちど気が付くのです。
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