Aug 02, 2009

ジャコテの詩を聴く

7月27日(月)のヴォワデポエッツでは後藤信幸氏が6月に国文社から刊行されたフィリップ・ジャコテの訳詩集『無知なる者―附ふくろう・エール』を読まれた。この詩集は3つの詩集が一冊にまとめられている。オリジナルは3冊ともガリマール社で、さいしょの『ふくろう…』が1953年に出版されている。この「ふくろう」と題する詩はジャコテの代表作といわれている。今回この作品がこの詩集の序詩の意味を持つことを教えられた。私はふらんす堂のコラム《詩人のラブレター》第28回でこの詩をとりあげた。ちょうど1年前の6月である。後藤氏が2004年に『冬の光に―附雲の下の想い』を同じく国文社から発表された折、『ふくろうとその他の詩』が刊行されるのを心待ちにしていた。この2004年の訳詩集の手ごたえがあまりにも素晴らしかったためだ。待ちに待った出版といえよう。後藤氏のお仕事は原詩人への深い沈潜が訳文に香りを添え、聴いて楽しく、読んで深々とした思いに誘われる。ランボーやボードレールの訳は日本語としてすでに定着したとも考えられるが、この訳業もそうしたレベルのものであることがわかる。受け手として、心から嬉しい出版である。この夕べ、後藤夫人も同席され、香り高い夕べだった。この2冊の訳詩集を1時間ずつ、遡って読んでくださるとのこと、嬉しい企画である。次回は8月25日(火)。 ジャコテをひとことで表すには、日常の中の眼の詩人といえばいいだろうか。詩とは一人の人間の世界に対する眼差しである。その眼差しを持って生ききる人である。といえばいいだろうか。詩を書くものの心を正させる詩である。
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