May 09, 2024
メルティの世界で そのはち
薄い煙が立ち上って、
水差しの中からバルが現れた。
ピノコや猫たちが驚いている。
昼寝してたところでした。
なんの御用でしょう。
ヴィヴィアンから事情を聞いたバルは、
口を開いた。
わかりました。
たぶんヴィヴィアンさんの想像の通りですね。
メルティさんの異世界と繋がりたい
という願いが通じたのか、
メルティさんが夢見の水を飲んで
その影響を受けたのか、
とにかくメルティさんの夢の世界が、
私の泉と繋がっているのは確かなようです。
さっそく、水をひかせましょう。
ジョンが扉を開けると
透明だったはずの境界の向こう側が
水に満たされているのが見えた。
ヴィヴィアンは呪文を唱えて、
水の侵入を押しとどめているようだ。
バルも手をかざして呪文を唱えている。
水は自分たちの精霊のバルがいるのを知って
喜んで乱流を起こしているが、
一向に水嵩が減る気配がない。
ちょっと水量が多すぎるようです。
かくなるうえは。
とバルがいった。
そんなことするとあなたが。
と言うヴィヴィアンの言葉が、
終わらぬうちに、
バルの半身は水に変化して、
扉の中に吸い込まれていった。
ああ、あの人、
全身水になって行ってしまいましたよ。
とジョンが言った。
水になれるなんてすごい。
みずから水になるとは。
などと猫たちも驚いている。
あの人、水の精霊だったんですか。
ええ、それも夢見の水って呼ばれている、
迷いの森に湧く特別な泉の水の精霊だったのよ。
もう元に戻らないんですか。
私が人間の姿になれる魔法の呪文を
教えてあげておいたから、大丈夫よ。
ただ、あれだけ大量の水の中に溶け込んで、
迷いの森の泉に導くつもりでしょうから、
どうなることか。
その頃、
メルティたちの乗った舟は
巨大な渦に遭遇していたが、
不思議に舟は引き込まれなかった。
だんだん水が引いていくよ。
やがて扉の境界の向こうが透けて見え、
池の水はすっかり引いたようで、
猫たちはぞろぞろと帰りはじめている。
すごいもの見せてもらっちゃった。
とマンスフィールドさんが言っている。
メルティたち元気でいるかなあ。
ジョンさんの帽子探さなくちゃ。
掃除が大変そうだなあ。
あの池の水また飲みたい。
などと猫たちが話している。
解説)
続きます。
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