Oct 30, 2023
蝶の行方 そのさん
運び出す作業してたら、
日暮れになっちゃったね。
日が短くなったなあ。
などと言っている。
これは何かの機械だね。
最終戦争で使われた不発弾じゃないの?
窓のような透明部分がある。
中に何か見えるよ。
ツナが表面に触れていると
機械の内部でカチッと音がして、
球体がかすかに振動し始めた。
球体の背面を覆っていた
蓋のようなパーツが開くと、
内部に折り畳まれて収納されていた足が
せり出してきて、
球体は器用に立ち上がった。
こんにちわ。
私の名前はシェル。
球体型避難用ロボットです。
とその球体は言った。
あ、どうも。
私はツナ。
ふーん。あなたロボットだったのね。
でも全然ロボットらしくないなあ。
これならどうでしょう。
とシェルが言うと、
球体の左右部分を覆っていた
蓋のようなパーツが開いて、
中から両腕がせり出してきた。
うん。
ロボットらしくなった。
ツナ、二人で遊んでないで。
状況を考えて。
とミトラが言った。
そうそう。とシェルが言った。
戦争はもう終わったのですか。
私が防御体勢を取って球体になっている時、
頭がおかしくなったロボットたちに
壊れて動かなくなったと思われて、
岩の裂け目に埋められてしまったのです。
ツナはシェルに、
墓標のようなオブジェが、
蝶の形のペンダントをくれて、
そのペンダントがここまで導いてくれたのだ、
と話した。
蝶の形のペンダントですか。
その持ち主なら、イリスという人で、
私の中で寝ています。
とシェルは言った。
空襲の爆撃が激しくなった時、
イリスは私の中に避難して、
休眠状態に入ったのです。
その蝶のペンダントは
非常用の私のコントロール装置。
頭のへんなロボットたちが見つけて、
墓標にかけたのでしょう。
寝てるって。
もう戦争は随分前に終わったよ。
その人起こさなくちゃ。
とミトラが言った。
一行はバーボンハウス前に
帰り着いた。
シェルター用のロボットか、
久しぶりに見るなあ。
と舞子が言った。
舞子、このロボットのこと知ってるの?
とツナが尋ねた。
みんなが知らないのも無理はない。
絨毯爆撃の激しくなった
戦争末期に、少数作られた特殊タイプよ。
耐熱性や耐寒性に優れていて、
人間が中に入って球体になれば、
ほとんどの攻撃に耐えられる。
主に避難用で攻撃力はないけどね。
それでは。とシェルがいうと、
前面の蓋のようなパーツが開いた。
頭頂部分の覆いのようなパーツも
内部に仕舞い込まれると、
女性の頭部が見えた。
なんか窮屈そうだなあ。
こういうの、私は遠慮するわ。
とナディアが言っている。
ナディアは下から支えるようにして、
そっとイリスの体を運び出している。
機内環境は完璧ですから、
健康状態も良好です。
目覚めるには少し時間がかかりますが。
とシェルが言った。
解説)
球体になるロボット、シェルのフィギアは、随分前に、
ミトラのフィギアボディと一緒に
ホビーオフで購入したものです。
両方とも正式な名称不明で、塗装して流用しています。
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