Jul 30, 2023
仮想世界で そのろく
![b1](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b1.jpg)
そうそう、これも忘れないうちに。
と言いながらナディアはバッグから
黒っぽいベストを取り出した。
![b2](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b2.jpg)
それはCGの装備品。
背中には特殊な運動補助装置が縫い込んである。
軽量だけど防弾機能もあるから
人間に使ってもらえればと思って持ってきたの。
ありがとう。
CGって言うと、ナディアさんは、
CGの唯一の生き残りだって聞いたけど。
![b3](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b3.jpg)
そういうことになるわね。
でもあの戦争のことはあまり話したくないの。
それよりあなたたちのことが聞きたいわ。
あなたはCGのことも知ってるみたいだし、
過去から来たと言っても、それほど遠い過去じゃない。
もしかすると私の母と同世代かもしれない。
そういうとナディアは、
バッグの中をもぞもぞと探し始めた。
![b5](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b5.jpg)
ナディアがバッグから取り出して
ドロレスに手渡したのは
一枚の写真だった。
![b6](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b6.jpg)
この人、あなたに似てるわね。
母なの。マヤ・ラパス。
母は若い頃、CGのメンバーだった。
私がCGになったのも母の影響よ。
同時代を生きていたなら、
どこかで見かけたりしたことが。
ドロレスは写真を眺めて、
じっと思い返していた。
ロボットだった時の記憶は
この仮想世界に来ても維持されているようで、
やがてベーカリー前の広場で
何度か見かけたことがあったのを思い出した。
![b7](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b7.jpg)
この人、私の住んでた町の広場で見たことがある。
町の住民じゃなくて、観光客だったと思うけど。
![b8](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b8.jpg)
そうそう。
町の広場ではいつも
大道芸人たちが歌を歌っていて、
この人が投げ銭をあげていたの思い出した。
優しい人なんだなって思った。
その町の広場って、
アンっていうロボットやドラゴンの子供がいて、
ちょっとした観光名所だった。
一時期、毎月コスプレのコンテストが開かれてたでしょう。
ええ、同じ町に間違いはないわ。
とドロレスは言った。
![b9](/~shimirin/blog/kirita/entries//20230730210122.files/b9.jpg)
母はね。そのコンテストで優勝したことがあったの。
とナディアは言った。
それは何かの勘違いじゃない?
優勝した人の中にはいないはずよ。
とドロレスは言った。
やっぱりここはシステムの作った仮想世界だわ。
母から直接聞いたので、日付も覚えてるわ。
2023年の7月のコンテストよ。
え。そうなの。
と、少し考えてからドロレスは言った。
毎月のコンテストの優勝者の発表は
翌月の初めだったはず。
だから、過去の私にとっては、
その出来事はまだ起きていない。
未来に起きる出来事なのね。
解説)
ナディアの母マヤ・ラパスは
昨年2021年のハロウィンの頃から
町の広場で観光客として時々顔を出していて、
過去の画像を探すと、いくつか
広場での情景の背景に写り込んでいます。
今回はそのうち2枚を再掲しました。
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