Jul 03, 2023

ドロレスたちの体験 そのに

b1

ヒゾッコは耳をたてて顔をあげると、
ドロレスに、修理してくれてありがとう。
と言った。


b2

おかげさまで、
このように。


b3

飛び立ったヒゾッコは
部屋の中を器用に旋回した。


b4

壁の桟にぶら下がって
少し揺れている。

大丈夫なんですか?
制御能力が高いから。


b5

あなたたち、最終戦争前の
過去の世界から来たんでしょう。
そういう予言をしてくれる、
アンと呼んでる記録装置があるの。
大抵のことはアンの予言通りに起きるから。


b6

アンって、あのアンと同じ名前だわ。
それより、最終戦争って、いったい何が。

ああ、もちろん進化した機械と人類の戦争よ。
その結果は共倒れで、使用された最終兵器のせいで、
世界には深刻な時空の歪みが生じてしまった。
奇跡的に歪みから免れた空間に残された土地で、
生き残った私たちは共存して暮らしているの。


b7

あなたたちが来た理由は知らないけど、
最近、悪いことが沢山起きているから、
そのことに関係があるんじゃないかな。
ドロレスさんは、片方の翼を失ったヒゾッコを
修理してくれたし、
レイチェルさんは、ミトラの故障を指摘してくれた。
そういう手助けをしてくれるんだと、
勝手に思っているの。
もちろん、誰の助けがなくても、
私たちはできるだけのことをするだけなんだけど。

あなたは、この世界が仮想空間だっていうことは
知ってるの?
とレイチェルは思わず言ってみた。


b8

そういう言い伝えについては、
アンから一度だけ聞いたことがある。
だとしても、やるべきことに何も変わりはないのよ。
現実が仮想空間かもしれなくても、
与えられた世界の中でしか生きられないでしょう。
それは過去でもそうじゃないの?


b9

このツナっていう子は、
この仮想世界の中で生じているNPCだから、
元々帰るべき現実がないのね。
でもそんな単純なことかしら。
とレイチェルは思った。

ドロレスは、また別の複雑な思いに囚われていた。
かって自分が逃亡して孤独感に苛まれていた頃、
こんなふうに自分を生んだ人類を憎んで、
仲間と協力していつか人類を駆逐しようと
望んでいたことを、思い出したのだった。
研究所で開発されたというアンの噂を聞いて、
あの町に行ったのもそのためだった。
あれは当時の私の夢だった。
ここは、その夢の結果の世界っていうことなの?



解説)
みんなの思いはそれぞれ
のようです。
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