Haizara-Cho::Suigara-yama 99[Shinsuke Kirita]

ピノコ

関節のパーツの針金が錆びていて
切れてしまったようです。
タップダンスのせいというより、
経年劣化のようですね。
これは全身に言えるかもしれない。
とマスターが言っている。




私たちに預からせて。
とヴィヴィアンが言った。
それはいいですけど。
素材の紙粘土もひび割れてきていますから、
いつ壊れてもおかしくない。
これは根本的に作り直す必要がありますよ。
ふむ。
救いたいのは体じゃないんだ。
とハリーが言った。




ハリーたちは魔術劇場に
操り人形を引き取った。




驚いたね。
さっき操った時は全然気が付かなかった。
普通人形に精霊が宿っているとわかるものなんだが。




きっとお父さんが操ったので覚醒したのよ。
10年ぶりなんでしょう。
よほど嬉しかったのね。
さて、それはそうと、
さっそく、この子に変身してもらいましょう。




ヴィヴィアンが呪文を唱えると、
薄い煙が立ち上った。




操り人形の体が大きくなった。
ありがとう。
お二人ののお話
ずっと聴かせてもらっていたわ。




あなたは魔法使いなのね。
今日は驚きの連続だわ。
私はピノコ。
操り人形に宿っていた精霊。
倉庫の中でずっと弘田三枝子の
「人形の家」状態だったけど、
あなたが言ったみたいに
さっきハリーさんに操ってもらって
パワーを分けてもらったみたいになって、
急に体を自分で自由に動かせるように
なったことに気がついたの。
それで嬉しくなって踊っていたら
とたんに足首が取れちゃって。
それでもう捨てられちゃうかなと思ったら、
今度はなんとあなた方に。

ピノコさん。あなたいくつなの
弘田三枝子なんて誰も知らないよ。
そうなの？

新しい体はどう？




ピノコは自分の姿を
魔法の扉で確かめていた。

気に入ったよ。
自由に動けて嬉しい。
でもなぜジャージなの？
ミラのイメージがあったからかな。
とヴィヴィアンが言った。




ピノコはさっそく広場に出てきた。

こんにちわ。私はピノコよ。
私はエヴァ。あなたも人形の精霊なのね。
同じ仲間ができて嬉しいわ。
僕はジョン。君の顔、
さっきの操り人形そっくりだけど
体のサイズは僕と同じなんだね。
よろしくね。
などと会話している。


解説）
また魔術劇場の住人が
増えたようです。

最後の画像の、魔法の扉の鏡に
映り込んでいる背景は幻です。

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