May 12, 2022
ハリーの過去
ハリーが屋台で肉まんを買っている。
どうも懐かしい味だと思ったら、
やはり丹下君が作っていたんだね。
ニューヨーク以来ですね。
魔術劇場が突然隣にできていたので、
いずれお見えになると思ってました。
そこにルビーがやってきた。
こんにちわハリーさん。
と言っている。
先日は不思議な体験をさせていただいて。
それはともかく、私、
ちょっと思い当たることがあって、
お尋ねできればと。
ふむ、どんなことかな。
実は、もう14年も前なんですけど、
この町で、CGの任務で、ある吸血鬼の男性と
交渉したことがあったんですが。
この前の夜のことを思い出していて、
その人物が、あなたによく似ていたような
気がしてきて。
いえ、もっとずっとお若い頃のような
顔立ちだったんですけど。
ふむ。
あれを思い出されましたか。
とハリーは少し楽しそうに言った。
いかにも。
ハリーが眼鏡をとって指を鳴らすと、
黒髪の男の顔が現れた。
その人物は、
こんな顔をしていたでしょう。
ハリーが笑うと、
鋭い犬歯がきらりと光ったようだった。
こんな老人の顔から、あの時の出会いを
思い出されたのは、さすがルビーさんですね。
たしかにあれは私でした。
もう昔のことですが、あの頃私は吸血鬼だった。
魔術の研究のためにあの一族と関係を持ったのです。
あなたもご存知のように、
CGが新鮮な輸血用血液を提供してくれるということで、
CGと私はいっとき、協力関係にありましたが、
結局CGの吸血鬼の不老不死にまつわる研究は
何の成果も生み出せませんでした。
その後、私は別の方法で、吸血鬼体質を解消したのです。
今では人の血液は必要としませんよ。
たまにあの頃が懐かしくなりますが。
とハリーは楽しげに言った。
解説)
今回話題になっている吸血鬼のエピソードは、
2008年3月11日「春の夜のできごと そのいち」
2008年3月13日「春の夜のできごと そのに(後編)」
で、描かれています。
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