Oct 05, 2021
文芸風な鑑賞
たまきやジェニーたち、
和室住まいの一行が美術館にやってきた。
さっそく、「女の肖像」(通称マリー・ローランサン)
という作品を眺めている。
ローランサンって、
パステルカラーの作風で有名な画家でしょう。
蓼科湖畔にあった美術館(注1)に
見に行ったことがあるよ。
とジェニーが言った。
それいつのこと?
と後ろでナオミが訊いている。
ローランサンといえば、
詩人のギョーム・アポリネールの
恋人だった人だね。
と文学青年がいった。
失恋したアポリネールは、
有名な詩を書き残したんだ。
「ミラボー橋」
ミラボー橋のしたセーヌは流れ
そしてわたしたちの恋も流れる
せめて思い出そうか
悩みのあとには喜びがあると
夜は来い鐘は鳴れ
日は過ぎ去ってわたしは残る
(飯島耕一訳)
これはモディリアーニがアポリネールを
描いたスケッチ(1918年頃)。
アポリネールの写真。
これをみると、モディリアーニのスケッチが
よく特徴をとらえてるのがわかる気がする。
写真は第一次世界大戦に従軍して
頭部に負傷した時のもの。
アポリネールが、スペイン風邪で亡くなったのは
1918年で38歳だった。
「少女の肖像」(ユゲット)(1918)
を見ながら、
オルセン姉妹がアルと話している。
この絵みてたらお腹すいてきちゃった。
ほんとう?
たまきたちが、「ライモンド」(1915)
を見ながら話している。
レーモン・ラディゲ(1903-1923)といえば、
夭折した天才作家。
「魔につかれて(肉体の悪魔)」(1923)が有名だね。
ラディゲが14歳の時、アリスという10歳年上の女性に出会い、
不登校のため放校処分になった。その体験をもとに、
十代半ばで執筆した作品といわれている。
と文学青年がいった。
うんうん。読んだことある。
とたまきがいった。
ナオミが、いつのこと?
と訊いている。
ラディゲを描いたとされる肖像画のもう1枚。
「レーモンの肖像」(1915)。
「ライモンド」と、同じ人なの?
と、たまきがいった。
「ライモンド」は、鼻の形や口元など、
けっこう様式的な試みをしてるからかな。
これは一説(注2)によると、その対になる一枚。
「アリスの肖像」(1915)。
これはマン・レイが撮影したラディゲの写真(1922)。
19歳の時の写真なんだね。
解説)
注1)マリー・ローランサン美術館。2018年に閉館しました。
注2)ラディゲの才能を見いだしたジャン・コクトーと
詩人・美術評論家のアンドレ・サルモンによると、この、
「レーモンの肖像」、(1915)「アリスの肖像」(1915)の
モデルがラディゲ本人とアリスだという。
この説を紹介している、
「アサヒグラフ別冊モディリアーニ」の作品解説によると、
作品が描かれた年には、ラディゲは12歳ということになり、
制作年代が一致しない、としたうえで、
「しかし、この本の草稿では、舞台はカフェ・ロトンドであり、
モディリアーニも登場し、アリスとの出会いも書かれている。
また、小説のヒロインであるマルトはモンパルナスの
グランド・ショミエール街にある画塾に通って
絵を勉強している。この二点の作品を関連づけようと
する試みを、まったく無視するのは惜しい気がする。」
とあります。
Edit this entry...
wikieditish message: Ready to edit this entry.
A quick preview will be rendered here when you click "Preview" button.