Sep 05, 2021
ジェーンのこのごろ
そのころ、ジェーンは、
キッチンの出窓から崖際の灌木にそぼ降る
9月の雨を眺めて、
はるか昔に聴いた曲のフレーズを
思い出していた。
セッテンバーレイン、レイン♪
キッチンテーブルに移動して
右手を見ると隣室の居間が展望できる。
この夏は、ほとんど居間に立ち入らなかった。
家のオーナーがやたらに二階と行き来して、
なにやら工作したり撮影して遊んでいたので、
すぐに見つかってしまいそうな危険を感じたのだった。
居間からはコンプレッサーの振動音や、
なぜか小川のせせらぎが聞こえてくることもあった。
ジェーンはこのところ、
キッチンの冷蔵庫の上に置かれた
段ボールの空き箱を住処にして暮らしている。
冷蔵庫の側面に貼られた
様々なホルダー類の突起を利用して
上り下りする。
キッチンテーブルのうえで、
食べられそうな物を発見すると、
すかさず借りていく。
おいしそ♪
物置同然になっている狭い書庫は、
ジェーンのお気に入り。
ここで書棚から古い文庫本を
引っ張り出して読みふけるのが、
楽しみなのだった。
洗面所で蛇口をひねって温水を貯めると
バスタブに早変わり。
相変わらずひとりきりでも、
毎日けっこう充実した
サバイバル生活を送っているのだった。
解説)
久しぶりに
間借り人ジェーンの登場です。
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