Jul 17, 2021
水のうわさ
歓楽の時は流れ
閉店して、客たちが帰った後、
オーナーのアルが、ジャンの傍に
椅子をもってきて腰掛けた。
最近、迷いの森に入り込んだ
密猟者たちが汲んでくるっていう
水の話って聞いたことある?
とアルは尋ねてきた。
隣席ではたまきたちが、
これからのことを相談していた。
たまきとナオミはワインを随分飲んだので、
町までオープンカーで帰るのをやめて、
それぞれ、同じ郊外にある
キサラとシオンの家に泊めてもらうことで
はなしがまとまったようだ。
明日二人をジャンの家まで送っていった際、
ジオラマの庭をみせてもらえるというので、
キサラもシオンも喜んでいる。
迷いの森では通るたびに
その場所の風景が変わってしまい、
それまでなかったはずの小川があったり、
池があったりするっていうんだ。
そんな森の泉から汲まれたその水にも、
そんなふうに、世界を変容させてしまう、
力があるんじゃないか、って
密猟者の間でもっぱらの噂なのさ。
表向きに言われてるのは、
あの水を飲んで寝るとすごくリアルな夢を
みられるってことぐらいで、
夢見の水って呼ばれてるんだけどね。
ジャンは、今日の三人の水飲み体験を
アルにも話したいと思ったが、
あまりに突拍子もないうえに、
噂話として広まるのもまずい気もして、
なんとなくいいそびれているうちに、
話題はジオラマの写真展のことにかわってしまった。
まだ企画段階で
夏木さんが話をすすめてくれてるんだけど、
開催がきまったら、すぐに知らせるよ(^_^)。
とジャンはいった。
ジャンがみんなと別れて
ほろ酔い気分で家に帰り着くと、
照明器具をつけていないはずの
ジオラマのリリスの家の窓に
ぽつんと明かりがともっているのがみえた。
ジャンはその夜はぐっすり眠り、
なんの夢もみなかった。
解説)
せっかくビストロをつくったので、
オーナーのアルの登場するシーンも
載せようと思って撮影しました。
こういう濃い顔のキャラクターは、
画像だけで、ものがたりが
うまれてしまいそうです。
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