Jul 13, 2021
リリス
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三人は倉庫で、また不用意に
夢見の水をのみながら、話の続きをしている。
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ねーわたし、ちょっと考えてみたんだけど、
と、たまきがいった。
このお水の作用で、あっちの世界と
偶然、接点がうまれたんだとして、
あっちの世界の人たちっていうより、
あっちの世界全体にとって、
私たちは部外者でしょう。歓迎されてるわけじゃない。
なんせ戦争中だからね。
それもあるけど。あっちの世界にとって、
部外者の介入は迷惑なんじゃないかな。
それで私向こうにいってもすぐに、
こっちにもどされたんじゃないかなって。
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ドイツ軍がジョー軍曹の乗ったジープを狙ってて、
たまきはそのジープに乗ってて、まきこまれた。
ただの偶然の不運じゃないの。
とナオミがいった。
起きたことの説明としてはそうなんだけどね。
だったらどうして、
たまきはむこうの世界にいけたの。
入り込んだたまきを排除できるんなら、
最初から入れなければいいんじゃない。
きっとそこまで万能じゃないんだよ。
ウィルスと免疫系みたいな関係だといいたいのね。
いまだれがいったの。
わたしじゃないよ。
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あ、ジャンさん。
この古そうなケースにはいってるフィギア、
映画「マーウェン」にでてくる
ベルギーの魔女デジャによく似てるね。
緑色の髪だし。黒いドレスだし。
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ああそれね。僕も映画をみて驚いたんだ。
そのフィギアは、もともとここにあったもの。
リリスって名前もついてるんだ。
由来を話すとちょっと長いんだけど。
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僕がここのバービーハウスを買って
住むようになったのは、
ジオラマの資材やフィギアを置ける
この倉庫つきだったからなんだけど。
家を買う時の条件として、このフィギアを
捨てずに、この倉庫に大事に保管しておくこと、
って、前の持ち主から言われたんだ。
ふーん。
前の持ち主は、人形のコレクターで、
この倉庫をコレクションの保管場所にして、
人形の家って呼んでた。
それで、このフィギアもその人の
コレクションのひとつだったんだけど、
どうしてもリリスが、
ここに住み続けたいって言うので、って、
冗談みたいなことを言われて、
そんな変わった条件つきで、
家を買ったんだ。
そういえば、マークさんの
ドキュメンタリーのスチール写真にも、
このフィギアによく似た緑色の髪の
女性フィギアが写ってたね。
あれが映画「マーウィン」のデジャの
原型なんだろうなって、思ってたんだけど。
とたまきがいった。
うん、僕も見てそのときは
そう思ったのを思い出した。
なぜだろう。なぜかそのことも、
すっかり忘れてたよ。
とジャンは言った。
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なんだか、話がドラマっぽく、ふくらんできたね。
この由来のあやしいフィギア、リリスに、
魔女デジャみたいな超能力がやどってるなら、
この倉庫で起きたこととも関係がありそう。
リリスの由来をたどると、
「死霊館シリーズ」のアナベル人形みたいになるのかな。
それって、こわすぎ。
とたまきがいった。
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と、そのときドアをかるく叩く音がして,
女性がはいってきた。
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ジャン、私のこと、
やっと思い出してくれたのね。
解説)
映画「マーウェン」や、とくに、
マーク氏の作品を紹介している
ドキュメンタリーのスチール写真で、
緑色の髪のフィギアをみたとき、
思わず親近感がわきました。
スチール写真のその緑の髪のフィギアヘッドは、
なんとクールガールシリーズのもので、
偶然、私も所有していたからです。
また、私も映画「マーウェン」の
魔女デジャの設定のように、
他のフィギアとは別扱いして、
ずっと寝室の本棚に飾ってあったので、
そんなところも似ていて楽しかったです。
もっとも別扱いしていた理由は、
映画での設定のように
特別な思い入れや魔力のせいではなく、
やはり特徴的な緑の髪の色のせいで、
飾っておくには綺麗だけれど、
ふだんのアクションには使いにくいからでした。
それで、同じようにに派手な
オレンジ色の髪のクールガールと一緒に、
ピエロの扮装をさせて、
ファッションドールのように
飾ってあったのでした。
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この本棚の上の一画にはピエロの人形ばかり
置いてあります。
今回はそういう経緯で、
このヘッドのフィギアを出演させたくなり、
急遽ミニサイズのフィギアも
つくってエピソードに仕立てたのでした。
こういうことをしていると、
話がややこしくなるばかりですが、
そこはそれで(^_^)。
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