Apr 26, 2025

家でくつろぐ

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シノたちも家に招かれ、
自己紹介を終えた後、
一同が揃って居間で歓談している。
みすずは質問ぜめに会っている。

この世界は夢の世界だって、
シノさんから聞きましたが、
誰が見ている夢なんですか。
みすずさんが住んでいるということは、
みすずさんが見ている夢なの?
夢の世界にも果てはあるんですか。
観光客が来るというのはなぜ?
現実の南の森と、
どうして門で繋がっているんでしょう。
あの恐竜たちはなんなんですか?

とても一度には答えきれないわ。
それに全てのことを知ってるわけじゃないの。
と言ってみすずは話し始めた。


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まずね。南の森は現実っておっしゃったけど、
一つの世界であるという意味では、
この夢の世界と変わらないのよ。
互いに異なる世界であるというだけ。
生まれては消えていく無数の世界は
それぞれが泡のようなもの。
その世界の間を行き来できるものがいて、
それは夢食いと呼ばれている。

夢食いは姿も性質もさまざまで、
ある世界に入り込んで支配したがるものもいれば、
ひっそりと住みついてその世界を守るものもいる。
気ままな旅人のような夢食いもいる。
ここまでが予備知識ね。

世界の間を行き来できるって、
それは魔族みたいなもの?

確かによく似た力を持っているけれど、
魔族っていうのは一つの世界に住む
人間の中の、特別な力を持つ種族の呼び名だから、
夢食いと魔族とは違うわ。
でもその魔族の持つ力がこの世界に関わっているの。

夢の世界は、普通は泡のように生まれては、
やがて消えてしまうもの。
けれど魔族の中には、稀に、そんな世界の性質を、
変えてしまう力も持っているものがいる。
そういう夢は夢見た人が忘れてしまっても、
実体化したまま残ることがあるの。
いつまでも消えない泡のように。

ここがそんな、
忘れられた夢の世界だというわけなのね。

夢を見ている人がいなくなった夢の世界は、
生きる世界を求める夢食いたちにとっては自由の天地。
私もシノもそんな夢食いの一人なのよ。
私の方が先にここに住み着いていただけ。
他にもそんな夢食いが住んでいるわ。


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みすずも私も、さっきの分類だと、
平和主義の夢食いになりそうね。
でも私はみすずと違って、
定住型じゃなくて夢を渡り歩くのが好きなの。
今は恐竜ウォッチングに夢中だけど。
みすずは、ここになぜ恐竜がいるのか、とか、
南の世界に抜ける岩の門については知ってる?
とシノが尋ねた。

恐竜がいる理由は私にもわからないけれど、
夢見ていた人の生まれる前の
胎内の記憶が関係してるのかも。

それは大胆すぎる仮説じゃない?

それに恐竜だけじゃなくて、いろんな時代の
野生動物もいるみたい。

あの鹿もそうなの?

あの子はここに来て最初に知り合った友達。
あと、あの岩の門は夢食いが作ったものじゃないわね。
私が来た時にはすでにあったのよ。
この世界の場合、泡と泡がくっつくように、
何かの理由で、南の別の世界とくっついている。
そこに何かの理由で穴が空いている。

結局、その何かの理由はわからないのね。


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やがて会合が終わり、
みんなジャングルを歩いて来て疲れたので、
午後はゆっくり疲れを癒そうということになった。
アイスとみすずが話している。

さっき、この夢の世界に、
他にも夢食いがいるって言ってましたよね。

ええ。この湖に住んでるのよ。
お守りにって、この鈴をもらったの。
ご紹介しましょうか。


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ほらあそこ。
本人はカエル王女って名乗ってるわ。

白いカエルは
こちらを見て驚いている。


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カエルはこちらに泳いできて、
みすずの膝に飛び乗った。
アイスさん。お久しぶりです。

え、君誰だっけ。
白いカエルに知り合いなんていたかな。
あ、君もしかして。

思い出してくれました?
私、白ガエルになりました。
とカエル王女が言った。

お知り合いだったの?
世間は狭いわね。
とみすずが言った。


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ヤビーさん、よろしくね。
とシノが言っている。
どうぞよろしく。
何してるの?
水筒から水を補給しているんですよ。
胸のマークのところを開けて注ぐんです。
食事しなくていいなんて便利なのね。
そうでしょうか。


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やがて、やや早い夕食が始まった。

ここは食材が豊かだなあ。
これ何の肉です?
もちろん恐竜のお肉よ。
などと話している。

ヤビーは見ているだけなのだった。


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さっきのみすずさんのお話面白かったわ。
AIが生み出した仮想現実世界ってどうなんでしょう。
仮想現実世界にも異世界からの侵入者が来たんですよ。
とツナが質問している。
一つの世界なら、どこで生じても夢食いが
侵入する可能性はあると思うわ。
私は行ったことないけど。
などと話が弾んでいる。


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やがて夜になった。

夢の中でも星空は澄んでいて、
南のジャングルと変わらないわね。


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ナディアさん。
洞窟の中でツナさんから、戦時中の話を聞きました。
ナディアさんは戦争中活躍されたんですね。
あなたのお仲間を沢山破壊したという意味ならそうね。

ヤビーは、ナディアさんはCGの最後の生き残りだと
聞いたって言ってました。
作業用ロボットってお喋りなのね。

人類軍の生え抜きの女性戦士部隊CGの噂は
私も聞いていました。
私たちを開発したロボットが、
これでやっとCGと互角に戦えるな。
って言ってたんです。
そうなの?でもみんな死んじゃったからね。
あ。
ナディアは、ふと思い浮かんだことがあったが、
口にしなかった。


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アイスは夜が白々と明けそめるまで、
カエル王女と話をしていた。

私が高台の休憩所にある水盤で暮らしていて、
ずっと旅に出た兄の行方を探していたら、
アイスさんが、
わざわざバッグの中に私を入れて、
兄の元に運んでくれたご恩は忘れもしません。

そんなことがあったわね。

あれから兄はあの土地と池を守る誓いを立てて、
今でもあの池をカエルの楽園にしたいと、
頑張っているんですが、
あるとき旅の夢食いカエル娘がやって来て、
その娘から、この自由な夢の世界の噂を聞いて、
私は兄と別れてこの湖に引っ越して来たんです。

せっかく兄妹で再会できたのに。

そうなんですが、兄がその娘に求婚したので、
私は独立を目指すことにしたんです。

そんなことがあったのね。

夢食いカエルは、魔族のみる夢に入り込んではいけない、
というのは父の教えですが、結果的に、
私たち兄妹は、二人とも教えに背いてしまったようです。
でも、この世界は特別。
みすずさんともお友達になれたし。
この湖には恐竜も来るし、大きな古代魚も棲んでいますが、
この世界に来て、私の体が白くなったせいでしょうか。
みんなちゃんと私を見分けて、
食べないでくれているんです。

それは良かったわね。
それはきっと、あなたが兄思いの
善良な夢食いカエルのせいよ。
とアイスは言った。



解説)
続きます。

アイスとカエル兄妹との最後の会話は、
2024年10月17日「賑やかな日々 そのご」
に出てきます。
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