Apr 18, 2024

ジェーンの世界 そのはち

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鏡の扉から出て来たモモコは
居間のガラス戸沿いに歩いて行った。


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あ、あれはトマソンさんだ。


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トマソンは大きな鉢を押して
位置をずらせている最中だった。


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声をかけると
トマソンは振り向いた。

モモコさん。
どうしてここに。

魔術劇場の寝室で
ずっと眠っていた
あなたの体が
消えちゃったのよ。

え、そんなことが。


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この世界で眠って起きても、
この世界の夢から覚めないんです。
体も消えちゃったとなると、
やっぱりもう戻れないのかなあ。
だから私が助けに来たのよ。

などと二人で話していると、
キッチンの方から
プチトマトを抱えたジェーンがやって来た。


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モモコ、久しぶりね。
どうやってここに?

夢を見てるわけじゃなくて、
前と同じように魔術劇場の扉を使ってきたの。
トマソンさんの体がなくなっちゃって、
本人を探しに来たんだけど、
扉が見つかると大変だから急いで帰らないと。


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3人は居間の隅にある
魔術劇場の前まで行った。

せっかく来たんだから、
もう少しゆっくりしたいなあ。
僕もまだ作りたいオブジェのヒントを
見つけていないんです。
だったらカーテンで隠せば
きっと見つからないわよ。


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ジェーンたちはカーテンを引っ張って、
魔術劇場を覆い隠している。


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こんなんで大丈夫かなあ。
とモモコは思っている。


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モモコがサイドテーブルの横に戻ると、
ジェーンたちはサイドテーブルの棚の中に
プチトマトを運び入れていた。
さっきトマソンが動かしていた鉢は、
足場用に使われていたのだった。


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ここは仮の棲家なのよ。
とジェーンが言っている。


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サイドテーブルの棚の中は、
3方をカーテンと家具と、
並んだ書籍に囲まれ、
タオル地の掛けられた箱の横に、
狭い入り口のある空間だった。

棚板の上には古い手袋や端切れが敷き詰められ、
非常用の照明器具らしきものが
横倒しにされたままになっている。




解説)
すぐ戻るつもりが
なんとなく思わぬ展開に。
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