Jun 12, 2023
貝の夢 そのさん
水盤の中央から
水が湧いているようだ。
水をひとすくいして、
口にしてみると、
夢見の水の味がしたような気がした。
さらに覗き込むと
水底に小さな貝が見えたので、
サラはその貝を拾った。
その場から出て見上げると、
木の梢にオウムのような鳥が
留まっているのが見えた。
木の枝ぶりは海風のせいか
波のようにうねっている。
アーチのある場所に戻ったサラは
海を見ている。
心地よい潮風の中
届くのは寄せ返す波音ばかり。
サラはだんだん眠くなってきた。
サラが目覚めると、
部屋にはキャップテン・クックドゥーが
遊びに来ていた。
本当に海の夢が見られたわ。
海の夢っていうより、
海辺の夢で、どこかの島みたいだった。
その島はね。
たぶん誰かが浜辺でその貝を拾った島だよ。
夢は貝の思い出なんだ。
契約さえすれば、貝の記憶は封印されて、
海賊船で航海する夢が見られたはずなんだが、
契約書は破ったので、
貝自身の想い出が解き放たれたんだろう。
島には赤っぽいオウムもいたのよ。
ああ、それはきっと私の飼っていたオウムだよ。
そんなことってあるの?
封印が解かれても、
私の想い出が少し残っていたんだろう。
あ、やっぱり消えてなかった。
島には泉があって、
そこでこの縞模様の貝を拾ったの。
それは珍しい。
海辺で拾った貝でないとしたら、
どんな世界が見られるのやら。
と船長が言った。
僕はふつうの海辺の夢がいいなあ。
海パンに着替えて寝るべきかなあ。
泳ぐのもいいけど、
フカに気をつけてね。
とサラが言った。
解説)
新たな謎を孕みつつ、
サラの夢の探索は終わったようです。
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