Aug 21, 2022
魔術劇場で そのに
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頼みというのは、これなんだが。
と言ってマーリンは、
スーツケースの中から一体のフィギアを取り出した。
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君に断られた場合を見越して、
このフィギアに精霊を宿して、
連中の首領にしてやろうと用意してきたんだ。
リーダーの出現を望んでいる彼らも喜ぶし、
私も噂から解放されるからね。
ただ、首領にふさわしい精霊を宿すには、
君の魔力が必要なんだ。
そんなこと、私にできるわけが。
子供の頃から透視能力ならあったけど、
魔法なんて使えないし、
教えてもらったこともないのよ。
とヴィヴィアンは言った。
君にも魔族の血が流れているんだよ。
なに簡単なことだ。私が合図するから、
思いを込めてフィギアを見つめて、
心に浮かぶことに集中してくれればいい。
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説得されたヴィヴィアンは、
呪文を唱え始めたマーリンの合図に従って、
フィギアを見つめて深く思いを凝らしてみた。
すると体の奥から不思議な力が発動して
身震いするような感覚を覚えた。
周囲に薄い煙が立ち上った。
カーミラは、あらら、と思っている。
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ハリーには、
そのフィギアは、確かに精妙に作られてはいるが、
これまで誰かに長い間愛玩されたり、
執着されたことのない、ありきたりのものに思えた。
そういうものに籠った想念の痕跡を感じ取って、
精霊を宿すことは極めて困難なはず。
しかし、今起きていることは、
彼のこれまでの経験を超えるものだった。
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薄い煙が消えていくと、
フロアにフィギアによく似た
等身大の男性が立っていた。
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ふむ。ここはどこですかな。
とその男性は言った。
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マーリンが杖をかざすとドアが現れ、
男性はおずおずとそのドアから去っていった。
ほんの僅かな間の出来事だった。
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ヴィヴィアン、うまくいったようだね。
それに、君の魔力も新たに芽生えたようだ。
あの人、どこへ行ったんですか?
ヴァンパイアたちの想像する世界だよ。
彼らが共同で夢見る世界といえばいいか。
この劇場の扉は、そんなふうに
異世界と繋げることができるんだ。
そうだろうハリー。
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確かに。
昔一緒に研究した魔法陣の呪法を、
よく覚えていたものだな。
それもそうだが、今の魔法には驚いた。
好きなものに精霊を宿せるってわけか。
随分上達したものだね。
マーリンは楽しそうに言った。
君が魔術劇場なんて啓蒙活動をやって、
忙しく世界中を巡っている間、
ずっと魔法の研究を重ねていたからね。
いやそれは冗談で、
実を言えば、僕の力だけでは
とてもまだそこまではできない。
実際にはヴィヴィアンの力だよ。
フィギアに宿った精霊はヴィヴィアンの
分身のようなものだ。
予想はしていたが、予想以上だった。
とても俄に信じられない。
とカーミラは思っている。
解説)
総統のフィギアヘッドは、
以前ドールショーで、ミニタリー系のフィギアを
扱っていたブースで入手したものです。
こんなふうに使うことがあろうとは。
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