May 07, 2022
5月の夜
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夜の探偵事務所。
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シェリー博士が貸してくれたこの本。
専門用語が多くて読みやすいわ。
とドロレスが言っている。
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それで、そのクロスワード完成したの。
隣の席の人に、
答えを言われちゃってさあ。
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全部ミューの言ってた通りになったね。
アン喜んでた?
特に変わりなかったよ。
え、アンってあなたと同じなんでしょう。
もうそうじゃないの。
アンのKSシステムはそっくり解除されてた。
復元して記憶を共有することもできるけど、
これからも私たちは、
無関係を装わなくちゃならない。
そのためにはアンは何も知らない方が安全。
お利口さんなのね。
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階下の喫茶店ペンギンでは。
レイチェルがシェリー博士と
お酒を飲んでいた。
お呼びだてしてごめんなさいね。
今日はどうしても愚痴になるけど、
聞いてもらいたくて。
いいわよ。
何でもおっしゃいよ。
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アンがまた試験運用始めたけど、
あれは表向きで、研究チームはもう手を引いたの。
アンは軍事用には使い物にならないって結論。
KSシステムは私がロックした状態のままだったから、
そのせいじゃないと思うんだけど、
たしかにそれまでの数時間は作動させていた。
その間に、何かシステム全体に
取り返しのつかない変化が起きたんじゃないかって、
バトラー博士や研究チームは考えて、
結局研究も中止することになっちゃった。
それが残念でならなくてね。
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ずっと研究してたんだから、
それは残念でしょうね。
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あのシステムは認知領域を拡張するもので、
理論的には対象の意思や想念を読み取ったり、
微弱な虫の知らせも感知できるはず。
そうなると、途方もない話だけど、
究極的には別次元の感覚に目覚めちゃうって、
ことも考えられなくもない。
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KSシステムがずっと動いてたって
言いたいの?
アンの記憶画像を調べていた時、
一つだけ気になるのがあった。
アンが巣箱の鳥と会話しているような場面。
それで、バトラー博士は?
そんなことKSシステムでも起こりえない。
って一笑にふされたわ。
確かにね。今のシステムでそこまでは。
それでこれから研究は?
私はもちろん原因究明したいんだけど、
今度の決定でアン自体がCGの管理下に入っちゃった。
状況次第では、私もお払い箱になるかもしれない。
くびになったらここで雇ってもらおうかな。
もちろん歓迎ですけど、
ここすごく暇ですよ。
とマスターのマリーネが言った。
解説)
春の夜の、人それぞれの
会話風景でした。
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