Feb 05, 2022
春節の午後のスナップそのに
奇妙なガルーダの舞は
まだ続いていた。
ベーカリーの店先には
お祭りの見物客用に、
簡単な机と椅子席が
増設されていた。
またきつねうどんを
注文した小力貴理子に、
アイスが話しかけている。
ねえ、その土偶すごくよくできてるね。
それにバッグのお面も自作なんだって?
ありがと、わたしなぜか
ちいさいときから狐が大好きで。
土偶に宿っている狐の精霊は
踊り出したくなって、
ちょっとむずむずしながら考えていた。
思えば10年前の春節にも
奉納された狐のお面に宿って
狐踊りを踊ったなあ。
しかしあのガルーダは神の鳥で、
お面になにが宿っているのかわからない。
わりこんで怒らせたくないし。
今日は龍舞もみられたし、
このきつねうどんもおいしそうだし。
我慢我慢。
警察官はベスに連れ添って
保護した子供を送り届けに行った。
あなたがマンスフィールドさんですね。
ええ、ルイちゃんは、
私の遠い親戚の入間さんの娘さんなんです。
今朝一緒にこちらにうかがったんですが、
目をはなしているうちに、
表にでていっちゃって。
そうでしたか。
ところで、ルイちゃんはおいくつなのでしょう。
さあ、いくつだったかしら。
それがなにか?
え、あ、
わからないと、つい気になっちゃって。
そのころ、研究所の博士と助手が
肉まんを買いに来ていた。
おや。
あ、こちらは小津静夫さん。
サラさんたちの部屋に住まわれてるとか。
あ、どうも。
博士、今の人ちょっと変じゃないですか。
体格がうちで破棄したロボットみたいで。
そうかな。考えすぎだよ。
顔立ちが同居人のケイ氏に似てたし、
きっと親戚かなんかじゃないの。
おとうさん、見破られなくてよかったね。
うむ。
それでさ。
小津静夫っておとうさんの本名なの?
夢の中で風に吹かれながら思いついたんだ。
なかなか、いい名前だろう。
うん。
飛び入りのガルーダの踊りが
ようやく終わり、
みんなの喝采を浴びている。
解説)
今回も、あれこれと
エピソードがとんでいます。
住民たちの話題や回想にでてくる
10年前の春節の様子は、
2012年の1月15日の「龍の年」から、
1月29日の「春節の踊り そのに」まで、
四回にわたって掲載されています。
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