Jan 30, 2022
短い旅
小池恵子はレイラを
アンナたちに紹介した。
多恵とレイラが知り合いだったなんて
知らなかった。
この人は私より古い住人なのよ。
そうなの?いつ頃この町に?
忘れもしない、
って調べてやっとわかったけど、
2013年の2月25日。
とレイラはいった。
ベーカリー前は 午後も
それなりに賑わっている。
アイスと貴理子の粘土細工が
それぞれ完成したようだ。
これは犬や猫の土偶じゃなくて、
招き狐のつもりなんだよ。
よくできてるねー。
通りがかったジャンとモモコが、
リリスのフィギアと一緒に
ながめていると。
あ、なんだか急に眠くなっちゃった。
といいながら、貴理子の
様子がおかしくなった。
貴理子は眠り込んでしまったようだ。
リリスのフィギアは招き狐と
なにかしきりに
テレパシーで交信しているようだ。
以下翻訳。
「やったー。体ができた。」
「あなたの仕業ね」
「え。わたしの声が聞こえるの?」
「よく聞こえるよ。あなた狐の化け物ね。」
「化け物って。あなただって、
みたところ人形の化け物なんじゃないの。」
「う。お互いに化身とか精霊とか呼びあいましょう。」
「どっちでもいいわよ。」
「そのひと、どうなってるの。」
「ああ、この人はね。今は眠ってるだけ。
お稲荷さんの初詣に、
自分で作ったお面を奉納しにきた人で、
ご先祖がちょっと私たちに縁のある、
霊媒体質の人だったから、
私がお面を介して依り代になってもらって、
町を見物させてもらっていたの。
大きな油揚入りのきつねうどんも食べたし。
さっき、この土偶をつくってもらって、
お面からこちらに移ってきたというわけ。」
「本人は気がついていないの?」
「全然。よくあることだよ。
それに、わたし悪戯するわけじゃないし。」
「ふーん。これからどうするの?」
「この人、この土偶をお稲荷さんに
奉納するつもりだから、そのまま、
もといた世界に戻るつもり。
短い間だけど楽しい旅だったよ。」
「そうなんだ。」
二人の会話は
モモコにはよく聞き取れなかった。
ドルフィンに運ぶ?
動かさないほうがいいかも。
などという声をききながら、
しばらくして、
貴理子はめをさました。
解説)
小力貴理子の謎のお面が
どうなることかと思ってましたが、
どうにかなったようでした。
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