Jul 06, 2005
オペラ座の怪人
過日、映画「オペラ座の怪人」を観ました。新宿紀伊国屋書店で待ち合わせた同行者に「何故この映画を?」と聞かれたけれど、特に理由があったわけではない。あまりにも有名なのに原作も読まず、舞台でも映画でも観たことがなかったからです。ですからこの映画が原作に忠実であるかどうかもわかりません。怪人ファントム説もさまざまですし。
原作は、フランスの作家ガストン・ルルーが一九一〇年に発表した小説。この小説誕生には、どうやら二つのヒントがあるらしい。一つはオペラ座で実際に起こった巨大シャンデリアの火災、落下事故。二つ目がこのオペラ座建築の際に、そこが湿地帯であったことから排水作業に困難を極め、結果それは地下の防火用貯水池となったこと。このオペラ座の不思議な事件が生み出した小説によって、オペラ座はさらに絢爛たる歴史を繋ぐことになったのでしょう。
その小説はさまざまな舞台や映画となっています。今回のミュージカル映画の監督と脚本はジョエル・シュマッチャーです。一九八五年のアンドリュー・ロイド=ウェバーのミュージカル舞台脚本を少し変えてあるようです。
舞台は十九世紀のパリ。でも台詞はすべて英語でした(笑)。オペラ座に乗りつける観客の馬車(これはわたしの個人的な熱い好み♪)、オペラ座の室内外の贅沢な建築、舞台の衣装の見事さ。馬や羊などは本物が出演していた!群舞の少女たちのうつくしさ♪そこからやがてプリマに選ばれてゆくヒロインのクリスティーヌのうつくしかったこと♪
映画を観終わって、夜の新宿の街に出たとたんに、「ららら~ら~らら~♪」と映画のなかで何度も繰り返されたメロディーを、歌い出したのは同行者である。わたしももちろん歌い出したけれど(^^)。この映画はファンタジーなのです。ヒロインを愛した二人の男の命がけの闘いの物語なのであります。溜息であれ、楽しかったであれ、まずは歌ってしまうことでありました。
でも一つだけ不満がある。それはファントム役のジェラルド・バトラーの歌声です。クリスティーヌは、亡父からファントムは「謎の師」「音楽の天使」と伝えられていたという存在なのですから、もっと澄んだ美しい歌声の方がよかったなぁ。ファントムがクリスティーヌをオペラ座のプリマにまで育てあげる役割をしているはずなのですから。
翌日になって、ファントムとラウルの二人の愛の間で揺れ動くクリスティーヌを思った時、寺山修司の詩をふと思い出した。うるおぼえなのだが……。
女のからだは お城です
なかに一人の少女がかくれている
もういいかい?
もういいかい?
逃げてかくれたじぶんを さがそうにも
かくれんぼするには お城はひろすぎる
「音楽の天使」怪人ファントムは、長い間、その醜い顔ゆえにオペラ座の地下洞窟で秘密に生活をしていた。その境界には湖があり、そこには不思議で美しく残酷な幻想世界が広がっていた。そこでファントムはひそかにずっとクリスティーヌを愛し続けていたのだが、ラウルの出現によってクリスティーヌを失うことになると思った時からファントムの行動も醜いものとなる。しかし最後にファントムはクリスティーヌを手放す。
人間がうつくしいということ。醜いということ。それは人間の生きるうえの大きなテーマではないだろう。おそらくは「どのように愛したか。」ということが一番大きなテーマであるはずだ。人間が生きるということはそれだけ。クリスティーヌの死後、ラウルは、ファントムが終生語り合ったと思われる「シンバルを叩くモンキー」のからくり人形を彼女の墓前に飾る。そしてそこにはひっそりと紅薔薇も。これはファントムがどこかで生きているという証だった。
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