もう10分か
暮れかかる日向川の
川べりの岩の上から
ミミズを静かに
垂らしては引き寄せまた垂らす
息せき切って駆ける鳥海山の清流に
不浄な一滴を加えたくなり
もう暮れかかったことだし
右手に竿を任せ
左手でジッパーをおろし
モソモソ引き出していると
コツと来て
ガツンと持っていかれた
あわてて手首を立てると
右手の竿も
左手のさおからも放物線
なにをしてるだ!
両手でしなる竿を支え
ジグザグに走るやつを
なだめすかしてひきよせると
ヤマメにあらず30センチ弱のハヤ(うぐい)
手のひらにあまる体をひとひねりして
流れに戻った
興奮がしぼみ
しぼんだヤツを
左手でモソモソしまうと
あたりの余韻が消えないうちに
竿をたたんだ
ついさっきまで見えていた人家が
灯りになっている
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