深夜の花嫁
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深夜の花嫁



めざめて、深夜
水を飲む
グラスというグラスが
流しの中で折り重なって
倒れているので
計量カップできっちり100グラム
浄水器ごしの
水を飲む

100グラムの水が
冬の二時半おれに嫁いだのだ
冷えきった君を舌でころがし
ぬくもりを与え
地図を手渡す
君は鼓動のリズムで
管の迷路をさまよいながら
すべり落ちたりスキップしたり
百兆のおれの一つ一つに
かるくふれて分け入って
けものみちたどり
爪先のがけっぷちまで

「あらあら、大変!」
ひびわれた集中力をうるおす20グラム
煮つまった可能性の鍋に30グラム
こげついた右ひじを冷やす25グラム
それからそれから
腿の間の干しナマコにも少しばかりの慈雨を

ありがとう
深夜の花嫁よ
ざわついた闇も落ち着いて
明け方まで
ゆっくり
これでゆっくり


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