161番
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161番



郵便局は込んでいて
一人分空いている長いすで待った
顔見知りのやや若い女性局員
ほんの斜め前の位置で
目と目がクロスする二度三度
アブナイ
なにがアブナイかわからないが
 (ちがうんだ
 (なんでもないんだ
 (視線に意味はないんだ
なんでもない顔でいよう

でも
なんでもない顔とは
どんな顔かわからない
まじめなつもりの仏頂面
口をうすく開いて
視線を宙に遊ばせればアホ面
かといって
口元をゆるめてほほえめば
だれかの指が防犯ベルを押すかも
仏頂面→アホ面→にやにや顔の間で
顔面筋肉は右往左往
なんでもない顔なんてとんでもない

腕組みして疲れ果てたまぶたを下ろす
「158番のカードをお持ちのお客様・・・」(したまぶたがピクピク)
「159番のカードを・・・」(下っ腹がきつくなってきた)
「160番の・・・」(またクロスしないかな)

「161番のカオをお持ちのお客様・・・」


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