旅について
清水鱗造
台所の窓からは古びた自転車が
垣根に立てかけてあるのが見える
質問者には
「途中」と答えた
彼はいつも質問したのち
細粉になって前庭のほうに流れてしまう
きょうは土台石を運ぶ
両側に鶏頭が並んでいる飛び石を気をつけて踏む
千年石という
なかなか壊れない石
海洋では島が急に拡大しているが
すでに最初の種が風に乗って着いたらしい
海鳥に質問したが
やはり細かい粒になって海表を流れる
壁に耳を当てると
向こう側の人も壁に耳を当てているようだ
息遣いが聞こえる