新しい季節

新しい季節

三井喬子

なんだ?
と思わず言ってしまったが
それはわたしが捨てた
日々の白いハンカチに相違なく
暗い淵から
いくつもいくつも浮かんできて
水面に不定形に広がる。
意味もなく
風にふらっと舞い上がり
飛んだ
飛んだハンカチ
川の中州の枯れ木に干されている。
やがて乾くと
ピンと折りたたまれ
積み上げられる 石の上に。
次々と乾き 折りたたまれ
中州の枯れ木に白い花々が咲き
石が光り
ユリカモメがつついて崩すとまた積んで
次々飛んでくるハンカチに
ときおり枝の場所をゆずる。
なんと沢山のハンカチだ
なんと
青い空だ
春はひっそり揺れていて。



  1941年愛知県生まれ。
1969年第1詩集『きのこ』…2009年第10詩集『青天の向こうがわ』
日本文芸家協会・ペンクラブ・日本現代詩人会会員
『イリプス』同人・個人誌『部分』発行。