からだはからだ
高田昭子
温い息が吹きこまれる
耳の内側の産毛がいっせいに戦いで
思いがけないほどおおきな風の音になる
耳は
柔らかな骨とパン生地のようなものだから
食べ物に似ている
手
夏でも冬でも
心まで冷やす右手あたためて
肩
ちょうどおとこの脇の下あたり
頭
おとこの左腕に載せる
玉石脳髄
心と繋がっていないもの
目
目蓋がおもい
口
つぶやき
頬
花の色になれ 花の色になれ
産道
処女地への暗い道
あなたがこの世へ来た道
足
素足からませて
背中
見たことのない自分がきしんでいる