夕べに光る雨

夕べに光る雨

冨澤守治

幸せそうに
飾りつけられた、窓辺の
細やかなこころを襲う、冬の雨

激しく
叩きつけるように
覆い尽くして流すように、降る
滝のような瀑布のように、打つか、打たれるか
樹木の葉を洗い

会話を受け流すこともなく
今頃は、どこかで始まったであろう
多くの宴会で吐き出される、笑い声や
あるいは部屋の片隅で痛飲されるビールの
ただ一人飲む杯のように、ひとを酔わせる

迫る闇夜を恐れ、逢魔が時に投げ込まれまいと
子供たちが逃げ惑う騒がしい物音、雨音

しかもあるいは
もうたまらない
恋心を覚え、語りかけてくる、雨の水に薫り
大地に隠されていた地の匂いを馥郁とさせる
遠くに残してきた女(ヒト)の微笑みと会話のように
人工の灯りに光って踊り、ときめいて
時雨れる

私の荒れたこころにも
浮き上がることのない絶望に枯れた
嘆きにも寄りそってくる
どこか甘いざわめきのアメ

油断すれば冷たく、滲みて
衣服を浸してくる
水晶の哀しみにも似て、なぜか惑い
わが身をまきこむようにして、忍び込む

数え切れない夜を越した
世の繁み

いつか夜半に止むころには
濡れたひと夜の逢瀬
火を灯した窓のなか
あなたと、いのちに溢れておくれ