第二十四回目 李白の「客中作」


客中作

          李白


蘭陵美酒鬱金香
玉椀盛來琥珀光
但使主人能酔客
不知何處是他郷


「旅中の作」

蘭陵の美酒は鬱金の匂いがしており
玉の椀に盛ると琥珀色にかがやく
ただ主人が酒客のわたしを酔わせてくれれば
どこにいても他国とは思えない。

            田中克己訳
           『天遊の詩人 李白』(平凡社刊)より。


○蘭陵とは、今の山東省にある土地のことで、名酒の産地だという。また「鬱金」の根は古くから酒に香料として入れられた、と解説にある。そういえば、とろけるような琥珀色に熟成した中国の古酒の映像をテレビでみたことがあった。この詩のお酒もとてもうまそうだが、どんな味がするのだろう。私たちにはさっぱり判らなくなっているが、昔の中国だったら、おっ李白は蘭陵に旅したのか、そうそう、あそこの鬱金入りの酒はうまいからなあ、などと多くの読者に伝わったのかもしれない。随分まえのことだが、友人たちと奥多摩の渓流に遊び、酒を飲んだことがある。その時、なにかの拍子に「飲めば都」と言って笑われた。そういう変なことを、この詩の後半を読んで思い出したのだった。




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