これは一九七〇年の終わりから翌年の半ば頃までの間に私のノートに書きつけられた文章へ修正をほどこしたものである。
私は、一九六九年前後にその頂点をみた、おおかれすくなかれ私たちがうけとめざるを得なかったところの、一種独特の現実喪失、観念の解体の状況に、ある〈形態〉をあたえたいとおもった。そうしてそのことは、私たちの体験をひとつの時代の意味へとつなげてゆくべき回路をみいだすことの端初でもあるはずだ……。
このため、私は、さまざまに語られる〈現実〉からかぎりなくはなれてゆかなければならなかった。そのことの是非は問わないことにしておく。とまれ、一九六九年以後の時期に、広範なかたちであらわれた〈解体〉を、どのような仕方にもせよ、うけとめざるを得なかったもののうちのひとりであるたとえば〈私〉がこのようなすがたで在りつづけた〈部屋〉からの、これは一個の報告書である。
一九七二年二月
作 者
一九九三年四月二十日ワープロ入力畢 倉田良成
二〇〇二年八月四日ハードディスクに入力、同時に
九三年版の第一回校正。
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