196-3まぶたを開く力もなくなった母口に酸素のプラスティックカバーもう自然から半歩はみ出してしまった声の届かない道をひとり歩きだしている直接にはなくなった 母とおれたちを結ぶものきっと 雲のように見えるこの手でつかまえられないものになった・・・そしてあらゆる力をなくしたその手足の重さそのほほの冷たさほんとうにつかうときがきたのだ「さよなら」 ということば
197夕方妻が台所で「何時に食べる?」と聞くので「う〜ん、6時10分」と答えた「なんで6時10分」と聞かれたが「う〜ん」と言うだけ 答えられないそんなことってあるよねそんなことってあるね6時とか6時半とかそんな区切り方に飽きた?といって6時23分なんていうのもなあきらいだった納豆汁がおいしくてたまらない何かのサインのように口笛を吹くことが多くなったもしかしたらおれと宇宙のバランスが変わりつつあるのかな
196-2まぶたを開く力もなくなった母口に酸素のプラスティックカバーもう自然から半歩はみ出してしまった声の届かない道をひとり歩いている直接にはなくなった 母とおれたちを結ぶものきっと 雲のように見えるこの手でつかまえられないものになったあらゆる力をなくした母の手足のなんと重いことかそのほほのなんと冷たいことかほんとうにつかうときがきたのだ「さよなら」 ということば
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