May 25, 2007

きみもコクリコ

 今年は4月の半ばごろから、道のはし、アスファルトの亀裂などにコクリコの朱色の花弁が目立った。小学校の学芸会や運動会で作った鼻紙の花を思い出す、薄い一重の花弁が風に揺れているのは可愛らしい。支える茎もほっそり糸のようで、白を混ぜた緑のぎざぎざの葉っぱも好感が持てる。2、3年前から外を歩く時に気がついてちょっと不思議な気持がしていたが、今年の春は、そののんきな気持が、1種の危機感に取って代わった。その広がり方があまり激しいので。緑色のフェンスに、鮮やかな黄色の蒲公英と混ざって咲き乱れているのを見れば、ルノワールの絵を見ているような気持ちよさもあるのだけれど、何となくブラックバスを思ってしまう。
 ああ皐月フランスの野は火の色すきみもコクリコわれもコクリコ  与謝野晶子
 多摩の野をおほふコクリコ21世紀  かおる(昨年10月の『街』特集号)与謝野晶子と並べるのは恐れ多いが。
いまはもう、種になる時期で、細い茎の先にペン先ほどのしっかりした筒を付けている。割ってみると中にはけし粒(文字通り)ほどの黒い種がぎっしり。その量の多さにジワーッと寒気がしてきた。大人のはしかがはやって、学校が閉鎖されている。ひとの皮膚を覆ったぶつぶつにダブって、薄い目まいがある。
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