Mar 26, 2007
ドナルド・キーン『渡辺崋山』
横浜に30分ほど早く着いたので、地下街の本屋に立ち寄った。平積みで、キーンさんの『渡辺崋山』が眼に入った。「新潮」連載したものが単行本になったらしい。わたしはこの連載を知らなかった。しばらく立ち読みして、カラーの絵の多いのに驚いた。「オルフェ」にいた頃、豊橋に旅行して、崋山の家の跡を見学したことがある。帰りのバス停までの遠いのがとても辛かった記憶がある。それは、崋山の死について知ったばかりの辛さと重なっていた。キーンさんが崋山をとりあげたことには、衝撃に似た喜びを感じる。豊橋の人たちは、今でも心底から尊敬しているという感触があった。その折に買った絵葉書の中で、どうしてもひとに送りようがない2枚が手元に残っている。長男への遺書と、縄を打たれている状景の素描だ。キーンさんは、優れた画家として描いているが、もちろん時代の認識者としてのするどい 知性についても触れ、あまりにも不運な人であったと悼んでいる。こういう人が前の時代にいたのだということを知ることは、自分の人生にとっても大切なことだ。それ以来、意識のうちにそういった思いがずっと沈んでいたので、暗いトンネルの先に明かりが見える思いがした。遅く帰ってテレビをつけたら蜷川演出のアヌイの「ひばり」をやっていた。岩切さんの訳で、わたしは2月の早いうちに見た。
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