Jun 27, 2007
ひとり、空しく、傷ついて(4)
暮しの労働に疲れて苦しむ友人たちのことを思う。
だが海が見える小高い丘の上に豚小屋を
建てるこの若い農夫は嫌いだ。
名のない川が汚染され
蜻蛉の住む谷は暗くかげる。
《借金をする人が豊かになる。》と人は言う。
だが息子たちの眼になにが映るかわたしは想像できない。
わたしたちの館の廃墟の向いに廃屋になった豚小屋なんて
まるで豚の殿様、地べたの殿様では ないか。
註
「ひとり、空しく、傷ついて」の中タイトルでくくられた四つの短い詩はこれで終る。タイトルがどんな意図を持つかはまだはっきりとはつかめないが、この詩人の詩風、詩想、あるいはひととなりを考えるとおよその推量はつく。日本の「平家物語」の上演についての示唆のなかに、《哀しい戦士》というフレーズがあったが、ゲルマンそしてローマに蹂躙された先史時代のケルトの祖先から脈々と流れ来る痛み、戦いの果てに屈服せざるを得なかった民族の誇りのトラウマが、現在五〇歳代の男盛りの詩人の心さえ、鬱屈させる。この四つの短い詩は、めずらしく透明感のある抒情に満ちている。郷土を愛する家族的な日常を淡彩で描いた絵のようだ。
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