Jun 25, 2007
ひとり、空しく、傷ついて(2)
眼の前でちらちら震えているのはどうも光のようだ。《ロクマリア》の町はワット島、メルヴェン、リル=オー=シュヴォーのほうへとつながっていく。
「逸話というものは詩の中に生きて埋められるべきだ」ときみは言う、
わたしたちの足元で一尾のかれいが灰色の砂の中をひらひら動き回るように。
二人の息子たちは綿毛に包まって眠っている、
幼年期の穏やかさの中で。
風が立ちますように!
とかげの住む灰色の家は安穏である――
ケルドニ岬の東風が低い戸口から吹込み、
古い階段は一体の彫刻のようだ。
註
ブルターニュ半島中部南岸キブロン湾沖に浮かぶベル・イル島の春から夏にかけての風景が歌われている。ブルターニュ最大の島ベル・イル島へは、キブロン半島南端ポール・マリア港から船で約45分。 このあたりはモルビアン県カルナックに近く、ケルト遺跡の多い地域である。
《ロクマリア》=le Bourg de Locmaria ベル・イル島東南端の市場町。bourg は近在の村から産物が集まる市場が開かれる比較的大きい町。ここには灰色のドームの小さな教会がある。
ワット島=Houat キブロン沖のベル・イル島の東隣りの島。巨石遺跡がある。
メルヴェン=Melven 不詳だが、同じく付近の島に違いない。
リル=オー=シュヴォー=L’Ile-aux-chevaux 意味は乗馬の島。不詳だが、同じくこの付近の島のはずである。
ケルドニ=Kerdonis ベル・イル島南岸東端ケルドニ岬から吹いてくる風。
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