Jun 20, 2007
サン=ゲブロックの夕べの印象(2)
この血と亡霊の劇は物事の非永続性の感情を与える。
セーヌ川のほとりの
二〇〇人の紙の人物たちは憂愁の劇である。
わたしは今夜、ストリンドベルイの「夢」を見るのではなく
ここに別の夢が繰り広げられる
「平家物語」から生じた
紙の人物すべてが
わきあがる。
琵琶を持つ男が
舞台照明の下で哀しい戦士たちと交錯する。
蜜蜂は重い戦果を抱えて嵐の前に帰巣する。
彼らは地に落ち、驟雨の下に死ぬ。
菩薩は踊る
死んだ皇后のために。
註
ストリンドベルイ=August Strindberg スウェーデンの劇作家(一八四九―一九一二)理想主義と嘲笑的な反抗の間で揺れ動く劇的な生涯を送った。「夢Le songe」は自伝的要素の強い劇で一九〇一年作。フランスでは一九二八年にアントナン・アルトーが上演しスキャンダルを招いた。一九七〇年にはレイモン・ルロー演出でコメディ・フランセーズが上演した。一九〇九年には最後の韻文劇「大道」を発表。日本の武士が桜の木の下で切腹するという筋書きの諦念の強い作品。
平家物語=《Dit des Heike》 Dit は中世の韻文物語、例えば「ロランの歌」などを指す。不明だが、「平家物語」がパリで何らかの形式で上演されたとき、カエールも見たのだろう。
琵琶=biwa 日本式のリュート(原注)
菩薩=bodhisattvas 如来に継ぐ格の釈迦の弟子。悟りを求める者の意で、青年時代の釈迦の面影を写す形で表現される。菩薩は複数である。皇后は建礼門院徳子。
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