Aug 16, 2006

映画「トリスタンとイソルデ」

が、10月に上映されるそうだ。以前に見たのはコクトーのモノクロの映画で、トリスタン役はジャン・マレーだった。トリスタンという名前は「悲しみの子」という意味だそうで、赤子の命と引き換えに生みの母が亡くなったので、愛妻を失った父親がそう付けたし、また、その父も早く亡くなって、孤児であったということだから、端正な容姿に影のある雰囲気の青年であるだろう。最後に恋人に会えずに苦しみの中で息を引き取り、その直後にイソルデが駆けつけるという、名前どおりの哀しい最後であったという物語を覚えているが、そのほかのシーンは忘れてしまった。今度の映画で見たいと思うのは、森の中で夜を明かす二人が間に剣を置いて寝るというシーンだ。運命的な恋を生き抜くために、さまざまなトリックが必要だった彼らのもっとも一発勝負の切り抜け作だった。人の心をつかむのは、万人の納得する正義ではなくて、破れかぶれの人間のはかないトリックだということ、これは詩 というものの意味とぴったり重なるだろう。
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