Sep 06, 2018
セルクル第12回はツエランとダンヌンツイオを読みました
セルクル第12回は9月5日(水)1時から5時まで前半はディエゴさんのレポートでガブリエーレ・ダンヌンツィオの長詩「松林の雨」、後半は有働のレポートでパウル・ツェランの2つの代表作「死のフーガ」、「エングフュールング(迫奏ストレッタ)」を読みました。ダンヌンツイオはご承知の通り、20世紀初頭イタリアを代表する詩聖で三島由紀夫に多大な影響を与えたヒーローです。ヴィスコンティの映画になった小説『イノセント』で日本でもよく知られています。レオパルディが 詩「無限」で詩の革命を起こし、ダンヌンツィオがそれを引き継いで「松林の雨」で最高の詩を創造したという流れになっています。11音節詩が古典的に最高の音楽性を保つと考えられるにたいし、ダンヌンツィオは短い3,4,5,7,9音節を用いてこの作品を構成しています。優雅で古典的な風格さえ見せる傑作になっています。内容的には恋人の女性と松林の中を歩きながら、世界のすべてが5月の雨に打たれる森に変身するという世界の更新を果たしているというものです。これに対してルーマニア生れのパウル・ツエランは詩を、美より真理に導こうとした、ナチスのジェノサイドを身をもって経験した詩人です。ドイツの二つの最大の文学賞を受けた講演で「詩は対話である」と語った詩人も38歳でフランス国籍を取得してパリでの生活を築き上げる努力を重ねながらも、「詩は絶望的な対話である、すでに沈黙するよりすべがない」と語って50歳でセーヌ川に投身自殺した詩人です。イタリアとフランス(ルーマニア、ドイツ)と国籍を異にし、対照的な生き方をした詩人です。出席者は田中もえぎ、金沢つとむ、細田傳造、志村喜代子、西宮順子、ディエゴ、有働の7人に、ツエランを自分に重ねて読み込んでいる野村龍氏が特別参加されました。