セルクル第11回は7月4日(水)無事終了しました
1時からのイタリア詩は、ディエゴさんが古代ローマの諷刺詩についてA3の大型プリント2枚のテキストを使って熱弁をふるいました。ギリシャに比べて精神的な活動が弱かったローマ人は文学的な分野はすべてギリシャから移植して用いたが、唯一独自に発達させたのが諷刺詩だったとの論旨は極めて新鮮です。社会への切込みを目的としたエピグラム(短詩)形で、人々の日常的な行為をやり玉にあげ、言葉で≪刺す≫ことによって人間の本音を浮き彫りにしている、生き生きとした2000年を経ても古びることのない文学分野として価値があるという論旨です。古代ローマ人の得意分野は戦争と建築だったというまとめ方も納得できるものです。〈br〉
フランス詩はJ-M.モルポワの詩集『青の物語』から3篇を有働が、オリヴィエ・カディオの詩と対比させながらレポートしました。批評的抒情詩リリスム・クリティークを自己の創作の原理とするモルポワに対して、5歳年少のカディオは≪リテラリテ≫と呼ぶ表現主義を主張して対抗しています。カディオと対比すれば、モルポワの詩的断章は古典修正的とも映りますが、実際テキストに向き合うとその文章の見事さにふうっと息をつくような満たされ方をして、抒情詩の捨てがたさに納得を覚えます。カディオもシンプルな言葉使いながら要所にピリッと作者の視線を利かせてそのリズムの心地よさに感服しました。6人の読み手のうち4対2で、モルポワに軍配が上がりました。両詩人とも、もっと読みたいという気持ちを起こさせる優れた書き手であることは十分に納得できました。〈br〉
その前の週の6月30日(土)に朗読会を開きました。今年前半に詩集を発表した4人の70代詩人というくくりで、有働の場合は訳詩集ですが、それぞれの個性が静かに表現できて、大成功の朗読でしたが、詩集そのもののアピールが弱かったという反省があります。詩集以外の作品も数多く混ぜ込んだために、詩人の個性は見えても、新詩集のイメージの立ち上がりが弱かったと思います。1冊の詩集はその場での詩人そのものですから、詩集というくくりをもっと鮮明にしたほうがよかったと思います。≪韻律磁場へ!≫という谷合さん作のタイトルは素晴らしかったと思います。1回では惜しいので、これからもこのフレーズを使った朗読会ができればいいなと思います。