クラ五の季節
2月4日の立春を過ぎて、昼間のあいだやや冷たさにゆるみが感じられる頃となって、さあ、クラ五を聞くときが来たぞと「お気に入り」に取っておいたタイトルをクリックする。去年4月にアップされたハーゲン四重奏団とザビーネ・マイヤーの組み合わせ。久しぶりの再会に、涙がこみ上げる。このセットは完璧である。演奏者が若い。マイヤーもローズ色のパンツスーツで、物静かで溌剌としている。このひとはドイツ人らしく背が高く、威厳がある。ヴィオラに金髪の若い女性。時折笑みを浮かべる。最も最高のグループだと思う。言葉がいらないのだ。血管の中が洗われたような。どのフレーズも忘れていない。子供の頃の家族写真のなかに戻ったようなしっとりした気持になる。(こういった気持がこれからずっと、自分の感情に伴走してくれるように祈る)第1バイオリンの伸びやかさ、第2バイオリン、ヴィオラ、チェロの奥深さ。先に走り、追いかけ、追いつき、ふざけ、おとなしくなり、まるで犬っころと遊んでいる気分。そして、遊びつかれてうたたねする。さくらが咲くまで、毎日聞いていく。