Mar 27, 2014
『海と毒薬』ようやく読了
いくども途中まで読んで先へ進めなかった。地元町田文学館の遠藤周作展示が終って、久しぶりにもう一度挑戦した。家でひとりで読むのはつらく、薄い文庫本なのでかばんに持って出て、駅のベンチや車中で断片的に読むという防御策を講じた。きのう最後のページまで読むのに、帰りの電車の乗換駅をやり過ごし、めったに使わないおよそ遠回りな順路をとることになり、ひどく疲れた。だが読み終えてよかったとおもう。そしていままで読んでいなかったことを悔いた。大変しつこい作家だ。しつこくて強い。明晰で容量が大きい。鋭いが細かくはない。でだしの部分の意図がつかめず強い違和感におびやかされた。作家の業、作家であることの苛烈さを思う。できればこんなテーマの中で生きていきたくはない。一言で言えば、日本人の自意識をひとりで背負ってしまった人格といえばいいだろうか。子供の頃、周囲の大人の意図でクリスチャンになった。そのことを青春時代にずっと意識の上に担い、いくども捨てたいと思った。フランス文学を学ぶ中で、自分のからだにあわない洋服のようなこの信仰を、脱ぎ捨てるのではなく、少しずつ仕立て直して自分の身に合うようにして着続けて生きていこうと決心した。ここに遠藤周作という作家の核心がある。この忍耐力としつこさ、うつわの大きさと誠実さがある。
Mar 20, 2014
灰皿町にも桜が咲いて
きのう池袋に出かけて用事を済まし、歩いているとヤマハ楽器の店があった。女の子がふたりで入っていく後につられて店内に入り、ええと、何がいるんだっけ?とりあえず2階に上がると楽譜の棚が目の前なので、CDで今気に入っている曲の楽譜を探してみようと。
ミサハ短調は幾種類かあったが、分厚くて5千円、3千円と手が出ない。アリアだけの楽譜があればいいのに。
いろいろみているうちにクラリネット5重奏曲の薄い小型の楽譜が700円(全音出版)、これにしよう。さっきユーチューブを聞きながら楽譜の追っかけをしてみたらこれがすごく楽しい。センスのいいフレンチを食べているような、モーツアルトになっちゃったみたいな! 泉の水が湧き出すように、春が湧き出して来る。今夜は冬返りだけど、日向ぼっこの猫があくびをしている。死んだ猫の写真におはようと挨拶している男がいる。
Mar 18, 2014
春一番、本日吹いています
おそかったですね。
3月にはいってから、冷たい風に縮みあがって暮らしましたが、いま生ぬるい灰色の風が吹きまくっています。建物を揺らす音。風の唸り。
泣きたいのに涙が来ないもどかしさのような気分。消防自動車のサイレンも混じって、本格的な春の入り口です。
これまでに書いたもの、全部捨てたと言う人の、哀しさ。これからは捨てられない、どこかに残ってしまう悔しさに悩むのかもしれません。忘れる力。忘れるために好きなこと、心に掛かることを身近に置きます。昔の思い込みを抜け出せた時の安堵。でも夢中だったことは許してください、可哀想にと言って。
空しいときはユーチューブで音楽を「見る」楽しみを覚えたので、気が楽です。時間も足りないくらい。
いま、お気に入りはモーツアルトのミサ曲ハ短調の奇跡的なソプラノアリア「聖霊によりて」です。