Feb 07, 2013

ジャルスキーのCD「Opium」を聴く

LP,CD以後に音と同時に映像を見ることが出来るようになったのは時代の恩恵だろう。YouTubeで録音の実況を断片的ながらのぞくことができるので、カメラの意図を差っ引いてもより身近に音楽家の体温を感じることができる。あるいは演奏中の駆け引きのようなものも垣間見られて面白い。ジャルスキーの歌うメロディーフランセーズではピアノのジェローム・デュクロの表情が楽しい。リサイタルに出かけて生で聞いてもこれだけの接近した映像は見ることはできないので、伴奏者が歌い手の声をいかに担っているかが直に伝わってくる。この歌手の特徴は前奏が響きだすやいなや、ただちに曲中に没頭していくことで、どんな小曲の場合も、大ホールでのグランドオペラのアリアの場合も変らない。自分の歌がこれらの同伴者たちの伴奏によってはじめて成り立っていることを本能的に知っているという素振りだ。それがフォーレのピエ・ジェスのソロを謙譲な美しさに満たし、もうこれ以上のこの曲を聴く必要はない、至上のものとまで思わせる。そしてオーケストラのメンバーも伴奏しながら一人一人魂を奪われているような様子をしている。伸びやかで華やか、そして深い息接ぎ。曲に魂を吹き込むという、曲と自分が融合していることがこれほどはっきり見て取れる歌手はめずらしい。CDで音だけ聞いていても、ユーチューブで見た演奏にまつわる映像が見えていて、いっそうライブな音楽として受け取ることができる。
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