Sep 21, 2008

『空にまんまるの月』木村まき詩集 西田書店2008年7月刊

 小沢信男さんの跋文の付いた詩集で、このタイトルになんだか懐かしさを感じたのは、自分の詩集『ウラン体操』(1994年ふらんす堂刊)の「獣」という作品の最終行「空に缶みかんの月」というフレーズを思い出したからだ。木村さんの最初の詩集のタイトルとこのフレーズを比べてみると、木村まきさんの詩とわたしの詩の違いがはっきり分ると思った。見るものは同じ、詩へ動いていくきっかけも同じ。だから、詩の心は同じ。だが処理のしかたが違う。
この詩集全体を読んで、とてもうらやましいと思った。「巧拙をこえてわきだす泉のようなもの。」と小沢さんの跋にある。泉、澄んだ濁りのない水。ほっとする、さわやかな感触。小沢さんはそれを「詩の恩寵」と表現されている。そうだ、詩とは、人の心の澄んだ泉、まぎれのない心。人をほっとさせるもの、リフレッシュするもの。わたしの月は半月、それも缶詰めから出てきた蜜柑の一切れのくずれやすい、危うい月。このひねりよう。これがわたしの個性だと思った。良し悪しは言わずに。木村さんの月は満月。大きく、冴え冴えと澄み切っている。言葉は恐い。小沢さんのような人の心を見る達人にかかると、一瞬で見通されてしまう。わたしは泣きながら、この詩集を有働に送りなさいと、木村さんに勧めてくださった小沢さんの配慮に感じ入るのだ。
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