Apr 24, 2008
小沢信男『裸の大将一代記 山下清の見た夢』
引き込まれて読んだ。山下清もさることながら、小沢さんの語り口のリズムに魅せられた。わたしは両親が地方出身だから、東京生まれといっても、ことに下町にはなじみが薄い。周りには下町育ちの知り合いも多いが、対し方がなんとなくぎこちなくなってしまう。小沢さんは長い間余白句会での先生でいらした。あこがれの、でももうひとつ近ずきにくい先生だった。この本が以前単行本で出たとき、欲しかったが、あきらめていた。それを、小沢さんから直接、それも恐れ多くも献辞入りで(小沢さんの字体の懐かしさも香り出てきて)いただいて、からだの底からうれしさが沁みてきた。先生、ほんとにありがとうございます。一気に読んだ。いちばん興味を引かれたのは、式場博士と山下清との丁々発止。インテリ代表ヴァーサス放浪の野生児。お互いの言い分がかみ合うわけがないのを、博士が驚くべき包容力で包み込んでいる。博士が山下清という巨大爆弾に向かって突っ込んで行った感じがする。自分が粉々になる危険を感じて避けるにちがいないこういう事態を、あえて(なぜ?)生き切ったこの人のすごさに感服した。巨人だと思う。このワールドに接することができて本当にうれしい。そして小沢さんご自身のこともすごくわかって、それがまたなんとも魅力がある。先生是非、次を書いてください。楽しみにしています。
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